男性ホルモン・テストステロンを作る重要なDHEAとは

男性ホルモン・テストステロンを作る重要なDHEAとは

主要な男性ホルモンであるテストステロン。その分泌に欠かせないのが「DHEA」というホルモンです。DHEAはテストステロンの分泌だけでなく、健康的な日常を過ごすためにも必要なホルモンです。

DHEAとはどういう性質のもので、どのような役割を担っているのか。関係する病気にはどういったものがあるのかなど、それぞれ紹介していきます。DHEAについての理解を深め、若々しく元気な体を維持しましょう。

DHEAはテストステロンのもとになるホルモン

DHEAは、テストステロンの分泌に深く関わるホルモンです。正式名称はとても長く、ほとんどの場合で頭文字をとってDHEAと呼ばれています。今回はDHEAはいつ分泌されるのか、いつが分泌のピークなのかなどを紹介します。

DHEAとは

DHEAは、正式名称を「デヒドロエピアンドロステロン」と言います。

思春期を迎えると多く分泌されるようになり、20代がそのピークです。その後は加齢とともに減少していき、80代になるとほぼ分泌されなくなります。

DHEAは腎臓の上にある副腎で分泌されます。副腎で産生される「ステロイドホルモン」と呼ばれるものの一種です。テストステロンはほとんどが睾丸で産生されますが、その前身のDHEAは睾丸で産生されるわけではありません。

DHEAの別名は「マザーホルモン」

DHEAは別名「マザーホルモン」「ホルモンの母」とも言われています。

それはDHEAが、テストステロンをはじめとして約50種類ほどの性ホルモンの産生に関わっているためです。テストステロンの他にも、女性ホルモンであるエストロゲンの産生にも関係しています。

子供を授かるための性ホルモンの産生に欠かせない、重要なホルモンなのです。

DHEAの役割って?

DHEAの役割って?

DHEAは、上述した性ホルモンの産生の他にもさまざまな役割を担っています。「体の維持」「免疫力の維持」「ストレスへの対抗」など、その役割は多岐にわたります。

DHEAは体を作る・守る

DHEAには以下の効果が認められています。

     DHEAの効果
  • 免疫力を高める
  • 感染症、冠動脈疾患、骨粗しょう症の発病率を下げる
  • 認知機能を維持する
  • 抗糖尿病
  • 抗動脈硬化
  • 抗肥満
  • 抗がん
  • 抗自己免疫

体を作ること、守ること、どちらにも欠かせないホルモンで、体を健康的に、かつ若々しく保つのに重要なホルモンと言えます。そのため、「マザーホルモン」の他にも「若返りホルモン」「長寿ホルモン」という別名もあります。

しかし、DHEAは20代をピークに徐々に分泌量が減っていきます。年齢を重ねるにつれて悩みがちな諸症状を思い浮かべてみると、DHEAの働きがわかるのではないでしょうか。

また、認知機能については「DHEAを補充しても改善などの効果は得られないものの、DHEAの分泌が減少すると認知機能も減少する」とされています。研究途中でありながらも、DHEAと認知力の関係性は示唆されているのです。

DHEAは免疫力にかかわる細胞を活性化させる

DHEAは免疫機能に関わるリンパ球の一種である、ヘルパーT細胞(Th1)の免疫活動を活性化させます。つまり、免疫機能を高めてくれるのです。ヘルパーT細胞には、Th1とTh2があります

それぞれ

  • ◆Th1……細菌やウイルスなどの「病原菌」に対抗する/li>
  • ◆Th2……ダニ、カビ、花粉などの「アレルゲン」に対抗する

という役割を持っています。Th1とTh2がバランスよく機能することで、私たちの体は正常に保たれているのです。

しかし、Th1やTh2のどちらかが強くなりすぎると、体に異変が現れます。Th1が強くなれば自己免疫疾患が、Th2が強くなればアレルギー症状が出やすくなってしまいます。あくまでも、バランスよく機能していることが重要です。

DHEAでストレスや疲れに対抗する

私たちの体は、ストレスを感じるとストレスホルモン「コルチゾール」を分泌します。DHEAは、そのコルチゾールにも対抗してくれるのです。

     コルチゾールは
  • 血糖値を上げる
  • 血圧を上げる
  • 疲れやすくする
  • 活性酸素を増加させ体の酸化(老化)を早める

といった働きをします。なかでも活性酸素は、体の細胞を酸化させ、DNAを傷つけ、細胞を減少させて、体にダメージを与えてしまいます。

DHEAはコルチゾールに対抗することで、細胞を守り、作り、体力や気力を健康に保つことができます。「いつも元気でいられる体作り」に役立っているといえるでしょう。

DHEAに関わる病気って?

DHEAに関わる病気って?

長寿ホルモンとも呼ばれるDHEAが減少すると、さまざまな病気を引き起こしてしまう場合があります。ここでは、DHEAの減少に伴って現れやすい病気としてアルツハイマー型認知症、全身性エリテマトーデス、クッシング症候群の3つを紹介します。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、慣れ親しんだ自宅の間取りがわからなくなったり、着衣がうまくできなくなったりといった、認知機能にまつわる症状が現れます。アルツハイマー型認知症の患者はDHEAの血中濃度が低いことが報告されており、DHEAとアルツハイマー型認知症との間には関係があるとされています。

また、研究段階ではありますが、DHEAが脳の神経細胞を酸化から保護することで認知機能の維持に役立っているとされています。

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデスは、全身性の自己免疫疾患が起きてしまう症状です。紅斑や潰瘍、日光過敏、関節炎、血液や免疫の異常、脳血管障害など非常に多様な症状を引き起こしてしまいます。

DHEAは、この全身性エリテマトーデスの症状を軽減すると言われています。特に血液や免疫の異常については前述した通りで、血圧や血糖値の上昇を抑え、免疫機能を助けてくれます。

クッシング症候群

クッシング症候群とは、コルチゾールが過剰分泌されることで肥満、耐糖能異常、高血圧、筋力低下、骨粗しょう症、不眠、うつ病などを発症する難病です。コルチゾールはストレスを感じた時に分泌されるホルモンですが、DHEAはこれに対抗します。

しかし、DHEAが減少してコルチゾールに対応しきれなくなる、あるいはコルチゾールの分泌が過剰になることで、筋肉の分解を促進するという症状が起きるとされています。

DHEAの分泌を減らさないためにできること

DHEAの分泌を減らさないためにできること

ホルモンの分泌や健康維持に重要なDHEA。これを減らさないために、私たちは日ごろから何ができるのでしょうか。ここでは、生活習慣と食生活に関する3つのポイントを紹介していきます。

規則正しい生活をして、睡眠をしっかりとる

DHEAを減らさないためには、まずは睡眠をしっかりとることが重要です。

DHEAを産生する副腎は、睡眠中に分泌量が増す成長ホルモンによって、日中に受けたダメージを修復しています。そのため、十分な睡眠がとれていないことは副腎のダメージ修復、回復機能を制限することになるのです。

そのダメージが積み重なることによって、副腎の働きが悪くなり、DHEAの分泌が少なくなってしまう場合が考えられます。DHEAを十分に分泌できる状態を保ちたいのであれば、きちんと睡眠をとり、副腎に負担をかけないようにしましょう。

適度な運動をする

適度な運動を習慣づけるのもおすすめです。適度な運動をすると、男性ホルモンであるテストステロンの分泌が促進されます。テストステロンの分泌が促進されると、マザーホルモンであるDHEAの分泌も自然と増加します。

しかし、運動をすればするほど良い、負荷が大きければ大きいほど良いというわけではありません。激しい運動をすると、体内に活性酸素が増えてしまいます。あくまでも軽いランニングや速めのウォーキング程度にとどめて、全力疾走やフルマラソンなどの激しい運動は避けるようにしましょう。

緑黄色野菜や発酵食品、山芋、黒豆、納豆などを食べて副腎を元気に保つ

DHEAの分泌を減らさないためには、副腎の働きを妨げるものを避け、元気に保つものを食べることが重要です。

副腎に負担をかけるものには、

  • ◆血糖値を急激に上げてしまうもの(甘いもの・砂糖)
  • ◆カフェイン(副腎を刺激してアドレナリンを分泌させるため)

などがあります。血糖値の急激な上昇・下降やアドレナリン分泌の促進は、副腎に負担をかけてしまう行為です。

また、その逆に、副腎の機能を助けるものとしては

  • ◆緑黄色野菜(ホルモンの産生に消費されるビタミンBを補えるため)
  • ◆発酵食品(免疫力向上)
  • ◆山芋、黒豆(DHEAの分泌促進)

などがあります。できるだけ健康的な食事を心がけ、体に負担をかけないことが重要です。

おわりに

DHEAは、男性ホルモンであるテストステロンの分泌に関係するだけでなく、体を健康に保つためにも非常に重要なホルモンです。体に負担をかけず、いつまでも若々しい自分でいられるよう、「長寿ホルモン」を分泌しやすい生活習慣を心掛けましょう。

  • 参考文献
    ・田中消化器科クリニック https://www.tanaka-cl.or.jp/
    ・NEJM日本国内版 https://www.nejm.jp/
    ・日本Men's Health医学会ニューズレター http://www.mens-health.jp/wp-content/themes/sequence/pdf/News_Letter_Vol6.pdf
    ・MSDマニュアル https://www.msdmanuals.com/ja-jp/
    ・National Center for Biotechnology Information https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/
    ・品川美容外科 https://www.shinagawa.com/
    ・OMRON HEALTHCARE https://www.healthcare.omron.co.jp/
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