ED治療薬とは?仕組みから効果まで徹底解説

2020/04/02 ED治療

バイアグラのジェネリック画像

ED治療の第一選択としては「PDE5阻害薬」という内服薬が使われる。

そのPDE5阻害薬はペニスにどのように作用して勃起を促すのか。それを知らないと「飲んでも効かなかった」ということになりかねない。

まずは勃起が起こる仕組みを理解してもらいたい。

ED治療薬が効く仕組みとは


勃起は性的興奮(刺激)で起こる。それはエッチな動画や写真、官能小説のような活字でもかまわない。

性的刺激があると、大脳からペニスにシグナルが送られる。

シグナルが副交感神経であるペニスの神経終末に到達すると、それが引き金になってペニスの血管内皮細胞から「NO(一酸化窒素)」が放出される。

NOが出ると陰茎海綿体の細胞内に「サイクリックGMP」という物質が次々と産生される。

ペニスの陰茎海綿体はスポンジ状の組織で、「平滑筋」という種類の筋肉の塊だ。

陰茎海綿体の中でサイクリックGMPが増えると、平滑筋が弛緩してくる。平滑筋が緩んでくると、その緩んだ部分に普段の陰茎動脈の血流以上の血液が流れ込んでくる。

そして陰茎海綿体に血液が充満すると勃起が完成するのだ。

しかし、普通であれば大量に入り込んだ動脈血は、静脈に戻って出て行ってしまうはず。

ところがペニスにある程度血液が充満して硬くなると、陰茎海綿体を包んでいる白膜という組織によって静脈が押し潰されて閉じる。

そのため陰茎海綿体に血液が充満した状態が維持できるのだ。

では、PDE5阻害薬は、この勃起の仕組みのどの部分に作用するのか?

東邦大学医療センター・泌尿器科の永尾光一教授が解説します。

勃起の仕組みとED治療薬の働き図

「NOによって増えたサイクリックGMPは、いつまでも陰茎海綿体に存在しているわけではありません。

『PDE5(ホスホジエステラーゼ5型)』という酵素によって、すぐ分解されてしまうのです。PDE5阻害薬は、PDE5と結合してサイクリックGMPが分解されるのを妨げる薬なのです」


簡単にいえばPDE5阻害薬は、勃起を起こさせる薬ではなく、勃起を消えにくくさせる薬となります。


そのため「飲んだら勃起する」というのは大きな誤解。勃起の仕組みのどの部分が欠けても硬くてビンビンな勃起は完成しない。

PDE5阻害薬の効果を最大限に得るには以下のようなことがポイントになります


●性的興奮(性欲が低下していない)
●副交感神経の興奮(リラックスした状態)
●NOを放出する血管内皮が正常(動脈硬化が重度でない)

永尾教授によると「ですから男性ホルモンが低下していたり、うつ状態があると効きにくい。過度のストレスや興奮などで交感神経が優位だと効きにくい。

糖尿病や高血圧などで動脈硬化がひどく進行していると効きにくい、といったことが起こります」

PDE5阻害薬は、内科をはじめ幅広い診療科で処方してもらえるが、思ったより効果が得られないと感じたら泌尿器科で詳しく検査してもらった方が良いでしょう。


ED治療薬でアンチエイジング


実は、PDE5阻害薬はED治療だけに使われているわけではない。

肺の動脈が狭くなり呼吸器症状や心不全症状などを起こす「肺動脈性肺高血圧症」や、頻尿などの下部尿路症状を起こす「前立腺肥大症」の治療薬としても承認されている。

それはPDE5が、肺血管平滑筋、前立腺や膀胱括約筋、下部尿路血管平滑筋などにも存在しているからだ。


そして、全身の血管の内壁は平滑筋でできており、血管を拡張、収縮させる非常に柔軟性をもった働きをしている。


永尾光一教授は「PDE5阻害薬は、一部の平滑筋に働きかけるだけでなく、全身の血管の内皮細胞に作用し、全身の血管の拡張機能が向上したり、血管の修復細胞が増えることが分かってきました。

EDをPDE5阻害薬で治療することは、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞などの病気予防につながるのです」と言っています。


実際に、PDE5阻害薬を2日に1回、1カ月飲んだ人は、飲まない人に比べてあきらかに血管拡張反応がよくなったという海外データがある。

これは「血流依存性血管拡張反応(FMD)検査」を用いた研究によるもので、血管の拡張や収縮する血管内皮の働きが良くなったことを証明している。


ちなみにFMD検査は、血圧測定と同じように腕にカフを付けて血管内皮から血管拡張物質であるNO(一酸化窒素)がどれだけ放出されているかを超音波で調べる簡単な検査。

また、ED患者がPDE5阻害薬を2日に1回飲むと、血液中の動脈硬化などで傷んだ血管内皮を修復する「血管内皮前駆細胞」が増加することが研究データで分かっている。

そして、血管内皮前駆細胞が少ない人ほど心筋梗塞や脳梗塞の死亡率が高いということも分かっています。


PDE5阻害薬は血管を若返らせてくれる『アンチエイジングの薬』と考えていいと思います。

セックスの有無に関わらず、EDを早期に発見して定期的にPDE5阻害薬を服用することは命に関わる重大な病気を防いで、いつまでも身体の若々しさを保つことにもなるのです」と永尾教授は言います。


ED治療に対するPED5阻害薬の処方は保険適用外になるので、薬代が若干高めにはなるが、PED5阻害薬の中には効能が36時間持続する薬もあり、アンチエンジング目的として週1~2回飲むのであれば、健康増進やアンチエイジングの目的のサプリメントと比べてそう変わらない費用負担といえるだろう。


PDE5阻害薬の種類と選び方


現在、国内で認可されているPDE5阻害薬は、商品名で言うと「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の3種類がある。

また、バイアグラに関しては、2014年に特許が切れたことで「ジェネリック(後発医薬品)」も発売されている。

3種類のPDE5阻害薬の飲むタイミングや効果の持続時間などは、以下の表のような違いがある。

PDE5阻害薬の比較表



世界で初めてED治療薬として発売されたバイアグラは、飲んだことはなくても誰もが耳にしたことはあるだろう。

しかし、容量が「25mg」と「50mg」の2種類で、他の2剤とは違う。容量で比較すればバイアグラが最も効くように思ってしまうが、どう理解すればいいのか。

永尾光一教授は「バイアグラの50mgは中容量で、レビトラとシアリスでは10mgに相当します。

ですからバイアグラ50mgを飲んでも効果が十分でない場合には、レビトラかシアリスの20mgに増量して試してみるのも選び方の1つのポイントです」と説明しています。


3剤の中でも特徴的なのは、シアリスの「36時間」という効果の持続時間。

あらかじめ性交する時間が予測できていれば、バイアグラかレビトラでもいいが、予測が難しかったり、今日か明日かと予測があいまいだったりする場合には、シアリスが最も使い勝手がいいです。


また、食事をした直後にPDE5阻害薬を飲むと、薬剤の吸収が遅れて効果が低下することがある。

バイアグラは食事の影響を受けやすいので、空腹時の内服が勧められる。

レビトラは普通食では影響を受けないが、バター、ベーコン、マヨネーズ、揚げ物、ナッツ類などの高脂肪食を食べた直後に飲むと、やはり吸収が遅れて効果が低下する場合がある。

その点、シアリスは食事の影響がないと報告されています。デートなどで食事を楽しんだ後に性交をする予測ができるような場合なら、半日くらい前にシアリスを飲んでおいた方が無難です。


各PDE5阻害薬の作用は同じでも、薬効成分はそれぞれ違うため、薬剤の効いているときの使用感や副作用の出現などは、かなり個人差がある。

はじめて使う場合には、3種類をそれぞれ試してみるといいでしょう。


ただし、狭心症など虚血性心疾患で「硝酸薬」を常用している人は、PDE5阻害薬は使用できない。

硝酸薬は血管拡張薬の一種で、PDE5阻害薬と併用すると全身の血管を拡張させて著しい血圧低下を起こすので併用禁忌とされている。


PDE5阻害薬を使いたい場合には、硝酸薬の中止が可能かどうか、必ず主治医に相談しよう。


PDE5阻害薬以外のED治療法


PDE5阻害薬はED治療の第一選択肢だが、残念ながら約30%の人には無効とされている

「ED診療ガイドライン第3版」(日本性機能学会/日本泌尿器科学会)では、PDE5阻害薬以外の選択肢として次のような治療法が上げられている。


◎テストステロン補充療法

テストステロン(男性ホルモン)の低下は、性欲減退を招いたり、血管内皮細胞からのNO(一酸化窒素)の放出を減少させたりしてEDの原因になる。

ガイドラインでは、テストステロン低下を伴ったED患者へのテストステロン補充療法を実施することを強く推奨している。

治療では、ある一定の間隔で筋肉注射でテストステロンを補充し、PDE5阻害薬を併用すると効果が期待できる。


◎陰圧式勃起補助具

陰茎に筒のような器具を装着し、陰圧をかけて陰茎内に血液を吸引した後、陰茎の根元にゴムバンドを巻いて血液を滞留させて疑似勃起状態を起こす。

使用する補助具は市販のものを患者が個々で購入する。

永尾教授の臨床試験では、有用性は85.6%と高く、安全性は95.2%でPDE5阻害薬より高い有効性を示した結果があります。

しかし、勃起させるのに10分ほどの操作が必要で、使用時間も30分と制限があるため脱落率が高いのが欠点です。


◎陰茎海綿体自己注射療法

医師から処方してもらった血管拡張薬を患者が性交前に自分で陰茎海綿体に注射して勃起させる治療法。

薬剤は「パパベリン」や「プロスタグラジンE1」が使われている。

国内でのプロスタグランジンE1の陰茎への注射(検査で使用)は認められているが、陰茎への自己注射が認められていないので、未承認の治療法として医師と患者の責任のもとで行われている。

性欲低下や神経障害に関係なく、陰茎の血管障害がひどくなければ注射するだけで自然と勃起するのが特徴です。

東邦大学を含む多施設でのプロスタグラジンE1を使った自己注射の自主研究の成績では、有効率は77%。

勃起の持続時間は患者さんによって異なりますが、テストを行ってだいたい1~2時間に設定して薬剤が処方されます。


◎陰茎プロステーシス手術

どんなED治療を行っても、性交できない人の残された最後の選択肢として行われる外科治療(未承認の治療)。

手術で陰茎海綿体の内部に、棒状の曲げ伸ばし式の器具(支柱)を移植する。

対象となるのは主に、重度の糖尿病や動脈硬化の人、前立腺や大腸がんで勃起神経を切った人、若年者では静脈性EDなどとなる。

自然な勃起が元に戻るわけではないので、期待し過ぎても良くありません。ただし、まったく性交ができなかった人ができるようになるという意味での満足度は高いです。

あえて移植後の患者さんの不満をあげれば、『陰茎が細い』『陰茎が温かくない』などの声があります。


陰茎プロステーシス手術も自由診療となり、費用は医療機関によって異なる。東邦大学医療センターでは日帰り手術も可能で、その場合の費用は税別で手術費50万円・材料費30万円〜になります。


ED治療薬は仕組みを理解して正しく使おう


ED治療薬を“精力剤”と同じように考えている人は意外に多い。

その化学的な仕組みを理解したうえで、医師の処方のもと、セックスだけではなく健康増進やアンチエイジングにも積極的に使ってみてはどうだろうか。

ED(勃起不全)は実は大病のサイン、見逃すと怖い事態に」で簡単に確認ができるEDセルフチェック方法を紹介しているので、是非活用してみてください。

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