さまざまな効果があるテストステロン(男性ホルモン)とは
テストステロンとは
テストステロンは、男性ホルモンの大部分を占める重要なホルモンです。思春期などの体が大きく変わる成長期では、男性的な体を形作ることに大きな役割を果たしますが、成長期を過ぎてもテストステロンにはさまざまな効果があります。
性欲を高める、記憶力・集中力の向上、筋肉量の増大、生活習慣病の予防に効果があるとされています。テストステロンが増えると筋肉量の増大、体脂肪の減少など肉体的に大きな変化をもたらしますが、精神的にも変化をもたらし、うつ病の改善、やる気の向上にもつながります。
テストステロンの構造について
引用:https://www.tcichemicals.com/JP/ja/c/10862
テストステロンは化学構造的にはステロイドホルモンに分類されています。
ステロイドホルモンは、ステロイド環という構造を持っているホルモンで、テストステロンのような男性ホルモン以外にも、エストロゲンやプロゲステロンという女性ホルモンも同様の構造をしています。代表的な性ホルモンの多くはステロイドホルモンに分類されています。
また、性ホルモン以外にも、副腎という臓器で作られる副腎皮質ホルモンもステロイド環を持っています。副腎皮質ホルモンを薬として利用したものはステロイド薬とも呼ばれ、炎症を抑えたり過剰な免疫を抑えるための治療に使われます。
2つの受容体が作用発現のスイッチ
テストステロンは作用を発現させるために、受容体というスイッチのようなものと結合する必要があります。テストステロンが作用するための受容体には、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体というものがあります。
テストステロンが増えれば、やる気が向上して活力あふれる性格に変化するなどのポジティブな方向につながります。
テストステロンはどこから分泌される?
テストステロンの95%は、精巣に存在するライディヒ細胞という部位でコレステロールを原料として合成、分泌されます。
残りの5%は腎臓の上に位置する副腎で作られています。テストステロンの分泌過程について詳しくは【テストステロンは一体どこから分泌されるのか?】をご覧ください。
筋肉量との関係性
テストステロンの分泌量が多い男性は、女性に比べると筋肉量が多くなりやすく、体も大きくなる傾向にあります。
テストステロンは筋肉量を増やしたり筋肥大をさせる効果を持っています。そのため、筋トレをして筋肉を大きくしたい人には特に重要なホルモンといえます。
集中力、精神機能にも影響する
テストステロンは筋肉の増強や成長などの肉体的な影響だけでなく、精神的にも影響も及ぼします。テストステロンが増えると明るく前向きな考え方になりやすく、活力にあふれる性格になりやすいといわれています。
また、やる気が上がるだけでなく集中力も高まることが知られています。実業家や経営者など仕事で成功している人は、テストステロンの値が比較的高いという研究結果もあります。
フェロモンとの関係性
フェロモンは、異性をひきつけるために必要な物質というイメージを多くの人が持っているでしょう。実際、海外の研究ではにおいで女性の行動が変化するというものもあり、フェロモンが何らかの影響を与えているとみられています。
フェロモンは脇の下から出ているという説があります。脇の下にはアポクリン腺という汗腺の一種があります。アポクリン腺からは、脂肪、タンパク質、ステロイドホルモンが体の中で分解されて生成されたものが汗と一緒に分泌され、比較的においの強い汗が出ます。
アポクリン腺から出る汗のにおいの原因として、テストステロンが分解された物質があります。分解された物質はアンドロステノールと呼ばれています。アンドロステノールのにおいを嗅いだ女性は、男性への接触行動が増えたという報告もあり、フェロモンの役割があると考えられます。
しかし、人間のフェロモンの存在については解明されていないことも多く、研究が続けられています。
テストステロンの基準値・正常値について
血中にあるテストステロンの98%は、血液の成分であるアルブミンなどと結合している結合型テストステロンと呼ばれる状態にあります。残りの2%は、血液の成分から離れた状態の遊離型(フリー)テストステロンとして存在しています。
遊離型テストステロンは結合型テストステロンに比べて加齢によって減少しやすいため、日本では遊離型テストステロンで基準値を定めています。健康な日本人男性の遊離型テストステロンは8.5pg/mL以上が正常値とされています。
しかし、正常値の8.5pg/ml以上でも11.8pg/mLに届かない場合には「男性ホルモンが低い」とされています。
テストステロンの男女差について
テストステロンは、男性だけでなく女性の体内にも存在しています。
女性の場合は男性の5〜10%のテストステロンが副腎や卵巣で分泌され、女性の性欲や妊娠にも関与してきます。男性と同様に筋肉、骨格の発達させる効果があります。
減少するとどんな影響があるのか
テストステロンは肉体的にも精神的も重要なホルモンだと理解してもらえたと思います。
しかし、テストステロンは20代を過ぎると加齢とともに減少してしまいます。減少するとどのような影響があるのか、「外的な影響」と「内的な影響」に分けて簡単に紹介します。
- 外的悪影響
- ED(勃起不全)など男性機能の低下
- 骨密度の減少
- 肥満
- 内的悪影響
- 倦怠感、やる気の低下
- 記憶力、集中力の低下
低下による起こりうる代表的な症状を挙げましたが、加齢以外にもテストステロンを減少させてしまう要素があります。それは食事のバランスや肥満、ストレスなど生活習慣の乱れです。
テストステロンはコレステロールを原料としているため、肉などの動物性タンパク質を適度に摂取しないとコレステロールが不足しがちになります。食事の内容によってはテストステロンが減っている人もいるかもしれません。
しかし、コレステロールの摂取を意識しすぎて肥満になると、テストステロンは減少します。生活習慣病のリスクにもつながるので注意が必要です。また、過度なストレスは脳の機能を低下させます。脳にはテストステロンを分泌させるホルモンを作る機能もあるので、ストレスによって脳の機能が低下するとテストステロンの減少にもつながります。合わせて注意をしましょう。
テストステロンは増やせる
加齢とともに減少するテストステロンですが、増やすことも可能なホルモンでもあります。
バランスの取れた食事や定期的な運動など、生活習慣を改善することがテストステロン増加には重要なことです。また、生活習慣改善と同時に漢方やサプリメントを試してみるのもいいでしょう。
漢方薬を利用
テストステロンの減少によって起きる、だるさや気力がないといった症状に、疲労を改善する目的の代表的な漢方「補中益気湯」が使用されることがあります。
また、過度なストレスがかかるとコルチゾールというホルモンが分泌され、テストステロンを減少させてしまいますが、そのストレスが原因としてあらわれる症状に「柴胡加竜骨牡蛎湯」が使われることがあります。
ストレスを抑えることでコルチゾールを減少させ、テストステロンの増加に期待ができます。その他では、排尿障害など泌尿器系の症状に使用されることがある「八味地黄丸」にも、EDやテストステロン減少予防に効果があると考えられています。
漢方薬とテストステロンについては【テストステロン低下に漢方が使われる?漢方との関係性について】に詳しく作用が期待できる漢方薬と共に紹介しています。合わせてご覧ください。
サプリメントを利用
体内には存在するDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というホルモンは、テストステロンやエストロゲンなどの性ホルモンの原料とされています。
DHEAは海外ではサプリメントとして販売され、男性も女性も利用できます。テストステロンの増加にも効果が見込めるとされる物質です。しかし、日本では薬機法によって医薬品指定物質であるため、一般には医師しか輸入できません。
そのため、病院で医師から自由診療で購入した方がいいでしょう。その他にも、亜鉛やマカ、アルギニン、シトルリンなどのサプリメントは血行促進作用や抗酸化作用を持っているため、男性機能増進とともにテストステロンの増加も期待できます。
食生活から
テストステロンの原料はコレステロールであるため、ダイエットなどによって極度に痩せてしまうとテストステロンは減ってしまいます。しかし、前述したようにコレステロールが増え過ぎると動脈硬化などの生活習慣病の原因にもなり健康を損ないますので、栄養バランスは重要です。
コレステロールを意識した食事だけでなく、亜鉛にも注意した方がいいでしょう。亜鉛は体内でアミノ酸をタンパク質に合成したり、DNAの合成にも必要になります。また、筋肉の増大や精子を作っている精巣など、新しい細胞が作られている臓器には必須のミネラルです。
健康の面でもテストステロンの増加にも、亜鉛とバランスの良い食事をとることが大切です。
生活習慣から
バランスの良い食事だけでなく、睡眠やストレス対策もテストステロン増大に必要なことです。睡眠不足の状況では、ストレス耐性も少なくなり免疫機能も低下します。
ストレス耐性が低下することでうつ病の原因にもなり、テストステロンも減少します。そのため、十分な睡眠時間を確保することが大切です。睡眠に入りやすくするために、決まった時間に起きて朝日をしっかり浴びてください。
朝日を感じると幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が活発になり、ストレス対策にもなります。ストレスはテストステロンの大敵なので対策は重要です。
筋トレでテストステロンを増やす
適度な筋トレはテストステロンを増加させる効果があります。また、筋トレを行うことで生活習慣病の予防にもつながり、ストレスを軽減する効果もあります。
筋トレの習慣をいきなりつけるのが難しい場合には、歩行などの有酸素運動からはじめてみるといいでしょう。
テストステロンを一度、測定してみよう
テストステロンの測定には血液検査が行われます。血液に含まれる遊離型テストステロンを測定することが基準とされています。
その他にも、男性ホルモンと薬指の長さが関係しているという研究があり、胎児のころに男性ホルモンの影響を強く受けると、薬指が長くなるともいわれています。テストステロンが身体に与える様々な影響について、今回はご紹介しましたが、テストステロンが低下して起きる症状は放っておいても改善することはありません。
まずはご自身のテストステロン値を知ることが大事です。テストステロンの減少を改善する方法は、薬やサプリメントの他にも生活習慣を見直すだけでも改善が見込めます。
専門のクリニックもありますので、この機会に体調が気になる方は受診して測定してみてはいかがでしょうか。
- 参考文献
・日泌尿会誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1989/95/6/95_6_751/_pdf/-char/ja
・大東製薬工業 https://www.daito-p.co.jp/
・NHK健康 https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1244.html
・健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/mineral-zn-cu.html
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