ED(勃起不全)は実は大病のサイン、見逃すと怖い事態に

2020/04/02 ED治療

「勃起は男のシンボル」とはいうものの、中高年になれば「さっぱり元気がない」とあきらめている人も少なくない。

しかし、勃起はセックス(快楽)や子作りのためだけのものではなく、健康のバロメーターの役割も担っている。

ED(勃起不全/勃起障害)を克服することは、若さを保ち、健康寿命を延ばすことにもつながるのだ。

ED(勃起不全)の症状と原因


EDは男性の性機能障害のひとつで、「性交時に十分な勃起が得られないため、または十分な勃起が維持できないため、満足な性交が行えない状態」と定義されている。


「まったく勃起しない」「勃起の硬さが弱くなった」「勃起が性交の途中で萎えてしまう」「一度萎えると再勃起が難しい」などがEDの症状だ。


EDはその原因から、身体に問題があって起こる「器質性」、身体に問題がない「心因性(機能性)」、その両方が影響している「混合性」に大きく分類される。

永尾教授の写真

東邦大学医療センター大森病院・泌尿器科の永尾光一教授


東邦大学医療センター大森病院・泌尿器科の永尾光一教授はこう説明する。


「器質性EDは、さらに身体のどこが障害されているかによって『血管性』『神経性』『内分泌性』『陰茎性』にも分類されます。

心因性EDは、精神的ストレスや不安・緊張、精神疾患など心の問題が原因になります。また、持病の薬の副作用によって起こるEDもあります」

日本におけるED有病率のグラフ

国内のED患者数は1998年に行われた疫学調査によれば、軽症ED(たまにED)を除き、中等度ED(ときどきED)と重症ED(常にED)合わせると約1130万人と推計されている。

年代別では50代の約40%、60代の約50%、70代では約70%が中等度ないし完全EDであったという。実に30~70代の4人に1人がEDを抱えていることになる。


最近の日本人を対象としたデータはないが、EDの有病率は年齢とともに上昇することが分かっている。人口の高齢化に伴って患者数が増加していることは確実だ。


「心因性EDは20~40代の若年層に多く、男性不妊の原因の13.5%が性機能障害であることが判明しています。

そして高齢化に伴い増えているのは持病に伴う器質性EDです。動脈硬化を進行させる糖尿病や高血圧などの生活習慣病はEDの大きな危険因子であり、加齢によるテストステロン(男性ホルモン)の分泌低下もEDの原因になります」と永尾教授は説明しています。


EDは男性なら誰でも経験しうる、避けて通れない「宿命」といえるのだ。



EDは重大な病気を知らせるサイン


中高年の多くがEDになっていても、実際に治療を受けている人は約5%にすぎないとされる。

しかし、「医療機関に行くのは恥ずかしい」「年のせいだから仕方がない」などと、性交の有無にかかわらずEDを放置しない方がいい。


永尾教授は「EDは心血管疾患の重要なマーカーなのです」と、こう警告する。

血管サイズ


「中高年のEDの多くを占めるのは、動脈硬化で陰茎動脈の血流が悪くなる血管性EDです。

全身の動脈の中でも、陰茎動脈の内径は1~2ミリと非常に細いので、動脈硬化が進行して心臓の冠動脈が詰まって心血管疾患を起こす2~3年前にEDを自覚することが多いのです」

心血管疾患患者の死亡発生率のグラフ

心血管疾患とは、狭心症、心筋梗塞、心不全、末梢血管障害などの病気。

数多くの研究の中には、心血管疾患の自覚症状がないED患者50人(40~60歳)に負荷心電図検査を実施した結果、56%に異常が見つかったという報告もある。


動脈硬化で心血管疾患を起こしやすい状態は、もちろん脳卒中などの脳血管疾患を起こしやすい状態ともいえる。

つまり、EDを「自分には関係ない」と放置していることは、心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる重大な病気を見逃すことになるのだ。



やってみようEDセルフチェック


EDかどうかは、EDの定義に当てはまれば診断できるので、だいたいの人は自分で自覚できるはずだ。


さらに「器質性」か「心因性」かなど、どんなタイプのEDなのかの鑑別診断はED専門医(泌尿器科医)によって行われる。

鑑別診断の検査には、詳細な問診や診察、心理テスト、内分泌検査、生理的勃起機能検査、神経系検査、血管系検査などがある。


医療機関で行われる問診には、下記の「SHIM(Sexual Health Inventory for Men)」という「勃起度テスト」がある。

1~5の設問に対して点数(0~5点)で回答する。心配な人は、とりあえずやってみよう。



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《SHIM》


この6カ月に、

Q1.勃起してそれを維持する自信はどの程度ありましたか
1 非常に低い
2 低い
3 中くらい
4 高い
4 高い
5 非常に高い



Q2.性的刺激によって勃起した時、どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか
0 性的刺激はなかった
1 全くない、又はほとんどない
2 たまになった(半分よりかなり低い頻度)
3 時々なった(ほぼ半分の頻度)
4 しばしばなった(半分よりかなり高い頻度)
5 毎回、又はほぼ毎回



Q3.性交の際、挿入後にどれくらいの頻度で勃起を維持できましたか
0 性交を試みなかった
1 全く維持できなかった、又はほとんど維持できなかった
2 たまに維持できた(半分よりかなり低い頻度)
3 時々維持できた(ほぼ半分の頻度)
4 しばしば維持できた(半分よりかなり高い頻度)
5 いつも維持できた、又はほぼいつも維持できた



Q4.性交の際、性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか
0 性交を試みなかった
1 極めて困難だった
2 とても困難だった
3 困難だった
4 やや困難だった
5 困難でなかった



Q5.性交を試みた時、どれくらいの頻度で性交に満足できましたか
0 性交を試みなかった
1 全く満足できなかった、又はほとんど満足できなかった
2 たまに満足できた(半分よりかなり低い頻度)
3 時々満足できた(ほぼ半分の頻度)
4 しばしば満足できた(半分よりかなり高い頻度)
5 いつも満足できた、又はほぼいつも満足できた


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《合計点数による判定結果》

22点以上 ⇒ 勃起力は正常
17~21点 ⇒ 軽症ED
12~16点 ⇒ 軽症~中等症ED
8~11点 ⇒ 中等症ED
5~7点 ⇒ 重症ED


「SHIMは、EDのスクリーニングや治療の効果判定に使われている問診票のひとつです。

21点以下であれば、EDが疑われます。また『勃起の硬さスケール(日本語版EHS)』という指標もあります。

自分の勃起はどの程度なのか、医療機関を受診するときにSHIMの点数と一緒に医師に伝えるといいでしょう」


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勃起の硬さスケール(日本版EHS)

グレード1:陰茎は大きくなるが、硬くはない。
グレード2:陰茎は硬いが、挿入に十分なほどではない。
グレード3:陰茎は挿入には十分硬いが、完全には硬くはない。
グレード4:陰茎は完全に硬く、硬直している。


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 客観的にEDの疑いを“測る”方法もある。市販されている専用の布製メジャー「エレクトメーター」(発売元・キースマック)を使って、睡眠中にきちんと「夜間睡眠時勃起」が起きているかどうか確認するのだ。


人は睡眠中に、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠を一晩に3~5回繰り返しています。]

通常、健康な男性の場合には、レム睡眠時に性的刺激とはまったく関係なく無意識に勃起を繰り返しています。これは男性の生理現象で『夜間睡眠時勃起』と呼び、朝目覚めるときの最後のレム睡眠時に起こる勃起がいわゆる『朝立ち』です。しかし、EDになると夜間睡眠時勃起の反応が弱くなり、朝立ちも気づかなくなります。

朝立ちがなくなったらEDを疑うべきです。


エレクトメーターの使い方は、ベルト状にして夜寝る前にペニスの根元の近くに巻き付けておく。すると正常に夜間睡眠時勃起があれば、ペニスが大きく膨らむので、その分だけメジャーに付いたストッパーが移動する。そして、朝起きたときにストッパーが何センチ移動(プラス)したかによって夜間睡眠時勃起の程度が測定できるという仕組みだ。



エレクトメーター

これを10日間くらい連続して記録する。評価は平均して、若い人であればプラス3センチ、中高年だとプラス2.5センチくらいであれば正常。プラス1センチ程度だとEDの疑いが強いとされている


またエレクトメーターは、器質性EDか心因性EDかの鑑別にも役立つ。夜間睡眠時勃起があれば、ペニスに血液が正常に流れ込んでいる証拠なので器質性EDではない。それなのに性交時に勃起しない場合は、身体に問題のない心因性EDが疑われる。


もっと簡単に夜間睡眠時勃起を調べる方法がある。市販の「切手」を使った「スタンプテスト」だ。切手が何枚かつながった状態で、エレクトメーターのように夜寝る前にペニスの根元の近くにのり付けして巻き付けておく。朝起きて、切手のミシン目が切れていれば夜間睡眠時勃起があったということが分かるわけだ。



EDを治療して“男の活力”を取り戻そう


EDは「セックスに支障をきたすもの」と、ある程度の年齢になったら「もう自分には関係ない」と放置してしまう傾向がある。しかし、EDを早期に発見して治療薬などで対策をとることは、全身のアンチエイジングになるだけでなく、命に関わる重大な病気の予防にもつながる。

ED治療薬はクリニックでも処方をしてくれます。また、治療薬以外にもいくつか治療方法があります。EDの治療方法について詳しくは「ED治療薬を仕組みから徹底解説」に記載しておりますので、EDセルフチェックで疑わしい結果が出た場合は確認してみてください。

また、セックスはしたいのだけど「年齢的に仕方がない」と、あきらめてしまっていることもアンチエイジングの視点では大きなマイナスになる。何歳になっても「若さを保ちたい」と思っているのなら、EDという治療可能な病と向き合って、いま一度“男の活力”を取り戻してもらいたい。

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