肥満の原因はコロナで落ちたテストステロンのせいかも

男の底力2020年7月21日1

新型コロナウイルスの感染者数は減らず、終息はまだ見通せない。男性医療の第一人者である順天堂大学医学部の堀江重郎教授は、長引く自粛生活で男性の活力の源ともいえるホルモン「テストステロン」の低下に警鐘を鳴らす。

自粛生活でテストステロンの危機

テストステロンはそもそも、獲物を取りに行くときに必要なホルモンです。現代社会では、他人に自分を認めてもらい、自己実現を図るホルモンでもあります。

また、リスクを取ることに関わっていると同時に、ボランティアをしたり、嘘をつかないといった倫理性にも関わっています。

自分の仕事が十分評価されていない、つまり前述の「他人に自分を認めて」もらえないことは、テストステロンが大きく下がる原因ですが、自粛生活のように、そもそも他人に会わないとテストステロンは出てきません。

テストステロンが出ないと、「自分だけよければいい」と言った考えや、他人を許容する度量が減ってしまいます。

テストステロンの減少が肥満の原因にも

テストステロンが減ると、どういうことが起こるのかを少し細かく説明しましょう。

テストステロンは男性ホルモンと呼ばれます。これは、男の赤ちゃんがオギャーと生まれた時にオチンチンがついているためにテストステロンが必要であり、また少年が大人の男性になり生殖機能を備えるためにも必要だからです。

20歳の頃のご自分を思い出してください。脚の筋肉は太く、腕の力こぶも大きかったはずです。筋骨隆々と言いますが、多くの男性は20代から30代が筋肉量は最大になります。

しかし現在は、ウエストはかなり太くなっていると同時に脚は細くなっているかもしれません。これはまさしくテストステロンが若い頃より減っている表れの一つです。

心の変調にも注意を

また、テストステロンは時代とともに減少しているようです。50年前のテレビニュースを見ると、太っている人が少ないのに驚きます。今は若い人でもお腹が出ているかたが多くなっています。

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この30年で肥満に該当する人の数を男女別に調べますと、女性はこの30年間にどの年齢層でも肥満者は減ってスリムになっているのに、男性はどの年齢でも肥満の人が増えています。

これは摂取カロリーに見合うだけの運動をしていないことが第一の理由ですが、テストステロンが十分に働いていない可能性もあります。

実験のネズミでも、テストステロンの働きをブロックするとまるまる太ってしまうので、テストステロンの作用は哺乳類に概ね共通していると考えられています。

したがって、「ベルトがきつくなった」という場合は、テストステロンが減っていないかも疑う必要があります。テストステロンが減るとストレスへの抵抗力も落ちてきます。以前は何ともなかった満員電車や駅の雑踏もしんどく感じるはずです。

コロナ禍で「心の変調」が起きている人が多いことが世界的に話題になっています。特に感染者数と死亡者数が世界一多い米国では、半数の人が不安やうつなどのメンタルの問題を経験したという調査も出ました。

最近太っていないか、イライラしていないか、電車が怖くないか、そして後ろ向きな発想が出ていないか、注意してみてください。

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この記事の監修者

堀江 重郎

堀江 重郎

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会理事、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。


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