【医師監修】自毛植毛で後悔! 施術リスク(副作用や後遺症)に潜む悲劇…

2020/09/17 自毛植毛
自毛植毛のリスクとは

薄毛に悩む人にとって、「自毛植毛」という選択肢は一見理想的な解決策のように映ります。「自分の髪なので違和感なく仕上がるはずだ…」と誰もが期待しますが、実際にその通りになるという保証はありません。

外科施術にはやはりリスクがあり、その副作用や後遺症で後悔する人もいます…。そこで本記事では「自毛植毛にどのようなリスクが潜んでいるか」について、「表参道総合医療クリニック」の田中 聡 院長が解説します。

表参道総合医療クリニック「田中 聡 院長」

自毛植毛に潜む6つのリスク(副作用や後遺症など)

自毛植毛は、「医療機関で外科手術を受ける」ということです。

実際に自分の頭皮(生え際部分のおでこや、移植元の後頭部など)に外科的な処置を施すわけですから、生じ得る影響についても把握しておかなければなりません。

1.毛根の定着までの時間が長い(あるいは定着しない可能性も…)

自毛植毛は、人工毛で増毛処置を施すのとは異なり、自分の髪の毛を毛根ごと採取して植え付ける医療行為です。

施術を終えれば「出来上がり」というわけではなく、施術が問題なく終了した段階でようやく「発毛に向けたスタートライン」に立てると言えます。

つまり、発毛までに時間を要するのです。


     効果の現れ方の差
  • 増毛施術…人工毛を取り付けるため、施術が終わればすぐにフサフサ感を味わえる
  • 自毛植毛…外科手術が終わって初めて、発毛に向けた「毛根の定着プロセス」がスタートする(術後、移植した毛根が定着するまでに時間を要し、そこから発毛を待つことになる)

自毛植毛は「外科手術→ダウンタイム→毛根の定着→発毛」という流れを経るので、目的地に到着するまで時間がかかります(増毛施術のように処置が終われば「フサフサ」というわけにはいきません)。

また、毛根がしっかり定着しなければ、「発毛に至らない」という最悪のシナリオもないとは言い切れません。

手術自体が無駄になってしまう可能性も完全には排除できないのです。

2.外科手術の痛みや腫れ(傷跡などが目立つ場合も…)

自毛植毛は外科手術なので、「手術に伴う痛み」が考えられます。通常、麻酔処置を施した手術になるため、オペ中に痛むことはほとんどありません。


しかし、術後に少し痛みを感じるケースはあると思います。このような場合は「痛み止め」で対処することになるでしょう。


また、術後には移植毛の採取元と採取先で「腫れ」や「傷跡」が生じることもあります。腫れについては時間経過で治まるのが一般的ですが、傷跡については残ってしまう場合もないとは言い切れません。

このため、ドクターの技術と腕が重要になってきます。

3.手術後の感染症の恐れ

自毛植毛は頭皮の傷をつけるので、傷口から感染が起こることがあります。通常は、皮膚の存在により、バクテリアや雑菌の体の表面からは侵入しませんが、手術後は傷口から侵入しやすくなります。

傷口の感染の原因となるのは、頭皮にいる雑菌だけでなく、空気中に浮遊する菌です。FUE法は翌日にはカサブタになっていることが多いですが、FUT法は傷口が大きいので、FUE法よりも感染のリスクが高いをいえます。傷口が感染しているかどうかは、傷口に過剰な炎症が起きているかで分かります。

     感染症の恐れがある症状
  • 痛みが強い
  • 赤みが広がっている
  • 腫れ上がっている
  • 膿が出ている
  • 縫合部分が開いてしまった

傷口が感染していると、治癒がスムーズに進みません。膿を出すために、一部抜糸をすることもあります。傷口に感染のサインがみられたら、自毛植毛を受けたクリニックを受診しましょう。

また、傷口の感染を予防するために、手術後の頭皮の清潔を保つことが大切です。傷口に血が多くにじんでいる場合は、ビシャビシャになる前にパッドを交換しましょう。シャンプーの仕方や時期はクリニックによっても異なるので、指示された方法を守ってください。

4.想像していたものと実際(仕上がり)とのズレ

自毛植毛では、「事前の想像」と「事後の結果」との間に大きなズレが生じることがあります。

たとえそれが「失敗」ではなくても、生えてきた時のイメージが手術前に想像していたものと違うという感想を持ってしまうこともあります。


女性の場合には、思ったほどボリュームアップができなかったという体験をされる人もいます。


この理由としては、「好条件がすべて整った場合を想像していた」ということがあるでしょう。毛根の状態一つとっても、AGAがある程度強めに進行している場合には、後頭部の毛根でさえ弱っているケースも考えられます。


また、髪1本の太さや質感についても、もともと生えている箇所での個体差もあります。

後頭部で生えていたものを前頭部にもってきたときに、違和感なく全体が馴染むのか…については、ふたを開けてみて初めて分かる部分もあるのです。


このため、過去の症例などをできるだけたくさん見せてもらい、「自分の場合にはどのような未来が想定されるのか?」をしっかりドクターと話し合っておきましょう。

医院の選び方も重要です【失敗しない自毛植毛の方法と医院の選び方】も合わせて参考にして下さい。

5.植毛部分のくせ毛や一時的な髪質変化

上述の「想像とのズレ」とも関係がありますが、特に毛根が定着してしっかりと馴染むまでの間は、一時的に植え付けた箇所で「くせ毛」などが生じることがあります

毛根が少しカールしたり、しばらくの期間、縮れ毛のような状態になってしまい、「こんなはずではなかった…」といった落胆につながってしまうこともあるのです。


要因はいくつか考えられます。たとえば植え付ける毛根の角度や深度の影響、あるいは毛根が受けたダメージ、移植先の皮脂分泌量や毛穴詰まりなども関係します。

人によっては、当初はカールしていたけれど、髪が伸びてカットし…という流れの中で違和感なく整っていくこともあります。

一般的には、生え始めてから1年程度の期間は少し不安定な状態になるといわれています。担当医とよく相談しながら経過観察していくとよいでしょう。


ただし、どれだけ腕の良い医師であっても、1~2%の割合で「好ましくない毛質変化」は起こります。自分がそうならないとは限りませんので、リスクとして事前に把握しておきましょう。

6.「ショックロス(植毛箇所周辺の脱毛現象)」の可能性も!?

ショックロスとは、自毛植毛実施後に見られるもので、「植毛箇所の周囲の毛(=植毛されていない部分の毛)」が抜け落ちることをいいます。


原因など正確なところはまだ解明されていませんが、一つ言えるのは「ショックロスは一時的な反応にすぎない」ということです。

つまり、時間経過によって元に戻っていきますので、そこまで心配すべきものでもありません。

ただし、こういった反応を全く想像していなかった場合にはショックが大きくなります。

このような反応が出てしまう可能性があることも予備知識として持っておきましょう。

ショックロスが起こる原因や確率、予防法を【自毛植毛の手術後に起きるショックロスとは】に詳しくまとめていますので、興味がある方は是非ご覧ください。

手術後の数日から注意したい症状と副作用

自毛植毛から数日経つと、この期間特有の症状がみられることも。自毛植毛から数日経ったときにみられる症状や副作用についてみていきましょう。

かゆみ

植毛手術後から数日すると、ドナー採取部や移植部の傷がカサブタになり、かゆみを感じるようになります。傷が治る過程で、ヒスタミンという化学物質が分泌されます。ヒスタミンは神経を刺激するので、かゆみを感じるようになります。

実はかゆみと痛みを感じる神経はほぼ同じなので、弱い痛みをかゆみと感じていることも。また、手術後のシャンプーが十分でないと、頭皮の皮脂が酸化したり、雑菌が繁殖したりすることで、かゆみを生じます。

しゃっくり

意外なことですが、植毛手術後から数日間しゃっくりが現れることがあります。植毛手術後のしゃっくりは頻繁にみられ、施術を受けた人の10%起こります。

しゃっくりは、肺と腹部を分ける横隔膜のけいれんによるもので、横隔神経の誤作動が関連しています。横隔神経は首の後ろ部分にある頚椎から出ている神経です。

植毛手術では後頭部からドナーを採取することがほとんどです。近くにある横隔神経にも一時的に刺激が加わること、しゃっくりが起こると考えられています。

頬やまぶたのむくみ

手術後2~3日すると、額やまぶたにむくみがみられるようになります。植毛手術で使用した麻酔剤が、重量力の影響で少しずつ下方へ移動するためです。自毛植毛後の額やまぶたの腫れのピークは、手術後数日経った頃です。

1週間ほどで麻酔剤は自然に吸収されるのに伴い、額やまぶたのむくみも治まります。自毛植毛後にドナー採取部の傷を気にして、うつぶせ寝をすると、額やまぶたのむくみが強くなることがあるので控えましょう。就寝時は仰向けを心がけたり、保冷剤で冷やしたりするのもおすすめです。

ごく稀に合併症のリスクも

自毛植毛は外科的な手術であるため、合併症が起こることがあります。手術の合併症は、手術が原因で起こる望まない症状のことです。

自毛植毛で起こりうる合併症には、ドナー採取部や移植部の出血や感染、傷口が開く(主にFUT法)です。また、非常にまれですが、局所麻酔によるショック症状や手術部位の壊死などもあります。

手術の合併症は、自毛植毛後、必ず起こるわけではありません。植毛手術は局所麻酔でおこなわれるので、全身麻酔の手術よりも合併症のリスクは低いです。とはいえ、手術後の過ごし方によっては、傷口の感染など合併症を引き起こすことも。

自毛植毛で最大限の効果を得るためにも、手術受けたクリニックの指示に従った生活を送りましょう。

「内服薬治療(AGA治療薬)」との違いで重要な2つのこと

内服薬治療(AGA治療薬)

AGA治療薬にはいくつかの種類があるものの、極端に言えば「処方されるお薬と自分との相性次第」というところもあります。

これに対して、自毛植毛の場合は「処置以前」に注意しなければならないポイントがあります。


上述した副作用や後遺症などとは少し異なる視点で、「自毛植毛」ならではの注意点を整理しておきましょう。

ドクターの腕次第で満足感も変化する…

自毛植毛の場合は、ドクターの腕次第で手術が成功することもあれば失敗することもあります。


毛根を採取して移植する際には「毛根を傷つけないような繊細な作業」が求められますし、移植先頭皮での「毛根の角度」や「植え付ける深さ」なども重要になってきます。


このような高度で繊細な技術は、ドクターの経験や実績、もともと持っている手先の器用さなども関係してきます。


よって、自毛植毛を検討している人は実際にそのクリニックまで足を運び、よくドクターと話し合いながら「本当に信頼できる医師なのか?」を自分の目と耳で見極めるようにしましょう。

単なる失敗では済まない(施術自体の経済的負担も大きい)

AGAの治療薬の場合とは異なり、自毛植毛の場合には容易に処置を中断できません。


「効果が出なければ服用を止めればよい…」という単純回避で事態は収束せず、毛根を植え付けるという施術をしてしまった以上、その箇所から髪の毛が生えてくることを基本的には止めることはできません。


もし、結果が受け入れられない場合には、それを取り除く処置を別に講じなければならない…ということも起こり得ます。また、自毛植毛の費用自体がもともと高額だという問題もあります。

大きな経済的負担と引き換えに理想的な未来を描いたはずなのに、「絵に描いた餅が、あろうことか喉につかえてしまう…」という悲惨な結末になることもあるのです。

このため、繰り返しになりますが、手術を決める際には事前にリスク面や周辺情報を丁寧に整理しておくことが重要になってきます。

無理に植毛を一度で終わらせるとリスク

薄毛に対してコンプレックスを感じている人の中には、1回で自毛植毛を完了させたいと考える人もいるでしょう。自毛植毛は薄毛をカバーできますが、男性型脱毛(AGA)を根本から治す治療ではありません。言い方を変えれば、自毛植毛後も脱毛は少しずつ進行していきます。

特に、自毛植毛は自分の頭髪を移植するので、無限におこなえる施術ではありません。髪質にもよりますが、生涯におこなえる自毛植毛は、FUT法で6000株(グラフト)、FUE法で3000株(グラフト)です。1回に採取できるのは1500~2000株(グラフト)です。

近年では、メガセッションなど大量の自毛植毛をおこなっているクリニックもありますが、最初に自毛植毛を一気におこなうと、年月とともにデザインが不自然になる可能性もあり、注意が必要です。

  • 頭頂部の自毛植毛を受けたものの、年数が経ち、黒い離れ小島のようになる
  • 生え際の自毛植毛後、頭頂部にも薄毛が進行し、カッパのようになる

上記のような事態を防ぐためにおすすめなのが、複数回の分けて計画的に自毛植毛を受けることです。自毛植毛を生涯にわたって、複数回受けるのであれば、1~2回目にFUT法をおこない、最後にFUE法の順でおこなうと、効率がよいでしょう。

ただ、日本ではFUE法を採用しているクリニックが圧倒的に多いです。FUE法は後頭部の広範囲にまばらにドナーを採取するので、以降にドナー採取ができるFUT法ができなくなる可能性が高くなります。FUE法でメガセッションをすれば、後頭部がスカスカになるリスクもあるでしょう。

自毛植毛で薄毛を完全にカバーしようとするのではなく、薄毛が気にならない程度を目標にすることも大切です。自毛植毛を複数回に分けておこなうと、その分料金や手間もかかりますが、男性型脱毛(AGA)の進行に合わせて、計画的に受けましょう。

計画的に自毛植毛を受けるには、ドナー採取方法による違いを知ることも大切です。自毛植毛の種類について知りたい方は【傷跡にも違いがあるFUTとFUEとそれぞれの特徴とは】をご覧ください。

自毛植毛にメリットはあるものの…

自毛植毛にはもちろんメリットもあります。特にクローズアップされる点は、以下のような3つのポイントなのではないでしょうか。

     自毛植毛のメリット
  • 自分の毛髪の移植になるため、拒否反応がほぼ起こらない
  • 毛根が定着すれば、半永久的に髪が生えるようになる
  • かつらのようなメンテナンス、薬剤のような服用維持(継続)が不要

上記のようなポイントだけに目を通していると、薄毛症状に対するベストな解決策であるかのように映ります。

ですが、これは「あくまでも手術が予定通り成功した場合の話」です。

AGA進行中の場合は、移植した部分と移植していない部分との差が顕著になってくることもあり、両者の密度差を広げないためにAGA治療薬を飲み続けるケースも考えられます。


万が一失敗してしまった場合(特に不自然な仕上がりになってしまった場合)については、生えてくる植毛部分の自毛を定期的にカットしながらカツラを装着する…なんて可能性もないとは言えません。


施術前には「理想的な未来予想図」だったものが、ふたを開けると「地獄絵図」のようなことになってしまっては困ります。

もちろん、技術の発展で今は成功する確率の方が高いでしょう。【自毛植毛で後悔! 施術リスク(副作用や後遺症)に潜む悲劇…】ページに自毛植毛について詳しくまとめております。自毛植毛にどれだけリスクがあるのかについては冷静に情報収集していただき、後悔のない判断を行っていただきたいと思います。



  • 参考文献
    ・アスク井上クリニック https://asc-cl.jp/
    ・恵比寿美容クリニック https://www.ebisu-bc.com/

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この記事の監修者

田中 聡

田中 聡

先端医療と再生医療、アンチエイジングを柱として、がんや脊椎疾患などの病気、そして痛みに対する治療を行うクリニックを開院。若返り、予防医療に興味がある方、更年期障害の治療で良い結果が得られていないという方は、お気軽に当院にご相談ください。 男性の若返りの治療や話題のNMN点滴の種類や内服に関しても豊富な種類をご用意しており、さらに長寿遺伝子を測定することにより、一人一人に合った適正量のアドバイスも可能です。高度な医療を取り扱いながら、開けたクリニックを目指して参ります。表参道総合医療クリニック(https://www.omotesando-amc.jp/)


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