中高年を襲う男性更年期障害チェックリストと高める術

2020/04/03 男性更年期障害

最近でこそ「男性更年期」の深刻さも話題にのぼるようになってきたが、その中身を正しく知る人は少ない。

専門医に男性の更年期障害「LOH(ロー)症候群」の実態を聞き、克服術とチェックリストをお届けします。

男性更年期障害をもたらすLOH(ロー)症候群とは


中高年に入ってからの「性ホルモンのアンバランス」は男性の体でも起きる。男性には、女性の「閉経」にあたる分かりやすい局面はない。

つまり、女性のように劇的なホルモン量の低下はないのだが、それでも加齢やストレスにより精巣機能が低下することで、男性ホルモンの分泌量は減少していく。


「女性と異なり、男性の体内で男性ホルモンが減少していくスピードは人によって大きく異なる。鬱症状などが顕著に出て日常生活に支障をきたすような人がいる一方で、まったく気にならない人もいます」

こう話すのは、メンズヘルス(男性医療)の第一人者で『ヤル気が出る!最強の男性医療』(文春新書)の著者である順天堂大学医学部泌尿器科の堀江重郎教授。堀江教授

女性の更年期が「閉経の前後10年」と定義されるのに対して、症状の出方や症状の出る期間に個人差が大きいことから、男性の更年期は病気としての定義づけは難しい。


そうした症状を専門医は「LOH症候群」と呼ぶ。テストステロンという男性ホルモンが減ることで起きる様々な症状の総称であり、いわゆる「男性更年期」と重なる部分が大きい。

そこでまず、LOH症候群の中心的存在であるテストステロンについて知識を深めておこう。


男らしさの源、テストステロン


男の上半身後ろ姿・筋肉

テストステロンとは、いくつかある男性ホルモンの中でもっとも代表的な存在。女性におけるエストロゲンに匹敵する男性ホルモンだ。


胎児のうちに、染色体によって「男性」と決まると、テストステロンが作られ、精巣などの外性器が形成されていく。

2~3歳になると、再びテストステロンの分泌量が増え、「男の子らしい遊び」に興味を持つようになる。3度目にテストステロンの分泌量が増えるのが、いわゆる思春期。

骨や筋肉がたくましくなり、「男らしい体格」が出来上がっていく。


このように、「男らしさ」の象徴であるテストステロンは、じつは別の面でも男性を支える重要な働きをしている。それは「社会性」だ。

社会人になると、仕事や商売の上で、時に“大きな勝負に出る”という場面がありますが、そうした時、男性の体内ではテストステロンの量が増えていることが分かっています。

また、体内のテストステロンの量が多い男性は“不正行為”を嫌い、正義感の強い行動をとる―という研究結果もあります。

人が自分以外の人たち、つまり社会とうまく交わり、協調していく上でテストステロンは非常に大きな役割を果たしているといえます。

そんな重要な役割を担うテストステロンの分泌量が、加齢とともに減少していくのがLOH症候群。その実態は男性にとって甚だ切ないものだ。


テストステロンが減少した男性の末路


無気力男性

「女性の更年期は、女性ホルモンのエストロゲンが低下する半面、男性ホルモンのテストステロンの量は変わらないので、考え方が男性的になっていくことはあるけれど、一定の期間を過ぎると再び元気を取り戻していきます。

一方の男性は、テストステロンが徐々に減少していくだけで、それを補うホルモンが出てくるわけではありません。次第に枯れていくだけなのです」


高齢化の進む日本では、全国で高齢者の集まりが花盛りだが、よく見ると山登りサークルにしてもジョギングクラブにしても、目立つのは女性陣。

男性はそもそも数が少なく、居ても集団の隅でおとなしくしがちだ。

ホルモン的に「男性化」に成功した女性たちに対して、ホルモン的に「弱男性化」してしまったお父さんたちは、どことなく顔つきも寂しげである。


深刻なのは、テストステロンの減少が招く「死亡リスク」だ。各国で行われている長期的な健康調査の結果を見ると、「テストステロンが高い人は長生き」という傾向があるという。


テストステロン値が高いと長寿


ホルモンレベルを4つの段階に分けて比較すると、テストステロンが最も高いグループの人は、最も低いグループの人と比べて脳梗塞や心筋梗塞などの血管系の病気にかかる割合が約5割も少なく、がんにかかる割合も約3割も少なかったのです。

大きな病気にかかりにくければ、当然長寿につながります。

結果として、テストステロンが高い人は、長生きしやすいということになるのです。


男性の体内におけるテストステロンの量は、20代でピークを迎え、あとは下がる一方だ。

ただ、「下がり方」は個人差があり、中には80代でも30代や40代の人と変わらないホルモン量をキープしている人もいるという。


テストステロン減少率の世界比較


世界に目を移すと、状況の異なる国もある。

「アメリカ人のテストステロンの動きは日本とほぼ同じで、20代をピークに低下していくだけですが、ウルグアイやネパールのデータを見ると、加齢に伴うテストステロンの減少率が明らかに少ない。

つまり、年をとっても男性ホルモンが減る率が低いのです。


やる気

これらの国々の男性は、日本やアメリカに比べて“競い合う”という場面を経験することが少ないことが背景にあると考えられます。

早い話がストレスの有無です。

精神的なストレスは、テストステロンを大きく減らすので、その意味でも日本の男性は不利ということができるでしょう」

現実とまず向き合うことから始めるしかない。

26点以下なら正常!LOHAN症候群チェック


テストステロン(男性ホルモン)の低下が様々な症状を引き起こすLOH症候群。その診断と治療はどのようなものなのだろう。

堀江教授の「メンズヘルス外来」を受診すると、最初に必ず問診票である「AMS(エイジング・メイルズ・シンプトンズ)質問票」への記入を求められる。

17の質問に対し、「なし=1」から「極めて重度=5」までの該当する項目に○を付け、合計点を診断基準に照らしあわせる。

ライフスタイルやLOH症候群に起因する症状の有無などをチェックします。

実際にはこれに血液検査でテストステロンの量や前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAの値、さらには血糖値や甲状腺ホルモンなどを加えて総合的に評価しますが、AMSの結果は診断の上で非常に重要な役割を持つことになります。


17の質問に回答した数字を合計し、「26点以下」なら正常、「27~36点」なら軽度、「37~49点」なら中等度のLOH症候群となり、「50点以上」の場合は至急治療が必要となります。

堀江教授によると、鬱病と診断されて精神科や心療内科に通院していたものの改善しなかった男性が、この検査からLOH症候群であることが判明。

テストステロンを補充する治療を受けたところ、鬱症状が改善しただけでなく、おしっこの間隔が長くなったり、長年途絶えていた「朝立ち」が再開するなど、「オトコとしての機能」が総じて改善するケースもあるという。

正直に回答して、自分のテストステロンの状況を把握してみよう。


■AMS質問票

以下の各質問毎に「なし 1点|軽度 2点|中程度 3点|重度 4点|極めて重度5点」の中から該当する答えから点数を合計して、LOH症候群の可能性をチェックできます。
(1)肉体的、精神的健康状態の低下を感じる自覚症状がある
(2)関節痛や筋肉痛がある。腰痛、筋肉痛、手足の痛み、背中全体の痛みなど
(3)汗をよくかく。思いがけず、突然発汗する。緊張していないのにのぼせる
(4)睡眠障害がある。寝付けない。しばしば目が覚める。早く目が覚め、疲れを感じる。睡眠不足。眠れない
(5)睡眠の欲求が強く、しばしば疲労感がある
(6)怒りっぽく、イライラする。小さなことですぐにカッとなる。不機嫌になる
(7)神経過敏である。緊張感がある。つねにそわそわして落ち着かない
(8)不安症。心配性。パニックになりやすい
(9)身体的疲労。活力不足。能力全体の低下。活動の低下。余暇活動への興味の低下。無気力。達成感がない。何かをするのに無理に奮い立たせないとできない
(10)筋力が低下してきた。弱くなってきたと感じる
(11)憂鬱気味で落ち込みやすい。もの悲しい。泣きそうな感じ。意欲減退。無力感。気分の浮き沈みが激しい
(12)「自分のピークは過ぎた」と感じる
(13)「燃え尽きた」「どん底状態にある」と感じる
(14)「あごひげ」の伸びが遅くなってきた
(15)性的活動、頻度が低下してきた
(16)「朝勃ち」の回数が減少した
(17)性欲や性的衝動が減少した。セックスの喜びが低下した。セックスの欲求が低下した

今回のセルフチェックの他にも当サイトでは、テストステロンの量を「大体の傾向」を見る簡単な方法「男の人生に関わるテストステロンの量を一瞬で知る方法」で紹介しています。

合わせて確認しておきましょう。


テストステロンを高めて人生を豊かに


男性ホルモンの「テストステロン」は男の“生命線”だ。

その量が男らしさを決定し、社会での成功や人としての幸せなど、男の人生を左右する。テストステロンが急激に減るとLOH症候群に陥り、男性更年期障害などを発症する。

テストステロンの重要性を認識したうえで、自分の体の状態をしっかり把握してほしい。


  • はてなブックマークに追加

この記事の監修者

堀江 重郎

堀江 重郎

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会 理事長、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。