金メダルかじり騒動で起きた「笑い」に潜む“空気”
東京五輪で金メダルを獲得した選手が表敬訪問した際、市長がメダルを噛んだ件について、ネット上やテレビで猛批判がありましたね。
現場の様子をテレビで見ながらとても印象的だったのが、噛んだ瞬間に報道陣や関係者らしき周りの人たちから起きた愛想笑いや苦笑いのような「笑い声」。
残念ながら不適切な行為を見たときや、失礼な対応をされた場合、なぜかその場ではすぐに怒ったり、指摘したりできず、笑ってしまうことがあります。
私自身も、飲み会の席で椅子の下に手が置かれていて座った途端にお尻を触れられた時など、「嫌だな」とは思いつつも苦笑いをしてその場をおさめたことがあります。
自分自身を傷つけないように笑いでかわしてしまうのか、場の空気を読んで波風を立てたくないのか、とっさに「笑い」でスルーしてしまう。
そんな笑いを、当事者は「ウケている」と誤って捉えてしまい、現場の凍った空気を読み取れない。結果、似たようなことを繰り返してしまう|という方もいるでしょう。これってまさに悪循環ですよね。当事者は周りの“本心”に気づかず、良かれと思って繰り返してしまう可能性があるのです。
セクハラ問題でもよく「あの時、笑っていたじゃないか」という声を聞きます。本人は呆れかえって笑うしかない、あるいは、その場の空気を守るために、やり過ごしたにもかかわらず…。
相手が「笑っているか」「笑っていないか」で、善し悪しを判断するのはやめるべきですし、イヤな対応をされた側も「笑い」でおさめてしまう風潮をどうにかしなければいけません。私はもうクセになっているのか、苦笑いが定着してしまっています。
「工藤さんは周りを不快にさせない対応が取れるよね」と褒められたこともありますが、よくないですね。少しずつでもその場で指摘ができるようにしない限り、勘違いする人は気づきません。金メダルに教えられました。
この記事のライター
工藤 まおり
フリーランスライター。津田塾大学数学科卒。大手人材会社を経て、セクシュアルウェルネスメーカー、TENGAの広報に転職。女性向けセルフプレジャー・アイテムブランドirohaのPRなどに携わった後、この春フリーランスに。PR業務、恋愛・性・キャリアに関するコラムを執筆。
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