「私には偏見がありません」と言う人の心の中にある「偏見」

2022/08/30

幸せおじさん2022/08/30

知り合ったばかりの方とのさりげない会話の中で、私のキャリアについて触れる機会がありました。以前、アダルトグッズを扱う会社にいたことを話すと、その方は「アダルト関係の職業についている友達もいるし、そういうことに偏見はないですよ」と、さらりと言いました。この「偏見はない」という言葉。自分を受け入れようとしてくださった、と思う半面、モヤっと心の中で引っ掛かりました。

いま読まれている方の多くは、「偏見はない」なんていい人じゃないか、と感じられたかもしれません。私が考えすぎなのでしょうか。

では、なぜあえて「偏見はない」という言葉を発するのでしょうか。裏を返すと、「一般的には偏見があるかもしれないが、私はあなたをそんな目で見ませんよ」と聞こえます。

なんだか、マウンティング(=優位な立場から物を言うこと)されているような気持ちになりました。

もし、私の方から「アダルトグッズ業界は、世間から色眼鏡で見られがちなのですが、××さんは偏見をお持ちですか?」と聞いたのであれば、良い返しだったかもしれません。ですが、私は、ただ自分のキャリアを述べただけです。なのに「偏見はない」と強調されたことで、モヤっとした気持ちになったのだと思います。

ネット上を見渡すと、「私にはゲイの友達がいるから、ゲイには偏見はありません」といった発言が、同じようにハレーションを起こしてよく議論になっています。この場合もゲイの友達がいようが、いまいが、ゲイという大きな主語でカテゴライズされるものに対し、もともと世間には「偏見がある」という前提に立ってしまっています。

こうして書いている私自身も、無意識に世の中をカテゴライズしている怖さも感じます。「世間はこう思っているはずだ」という“偏見”に立って、さも自分だけは理解をしているような物言いは、控えようと思いました。

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この記事のライター

工藤 まおり

工藤 まおり

フリーランスライター。津田塾大学数学科卒。大手人材会社を経て、セクシュアルウェルネスメーカー、TENGAの広報に転職。女性向けセルフプレジャー・アイテムブランドirohaのPRなどに携わった後、この春フリーランスに。PR業務、恋愛・性・キャリアに関するコラムを執筆。


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