コロナ第三波と「性の変化」2〜風俗店勤務の女性からの相談

2020/11/17 免疫力向上

1110ススキノ

新型コロナウイルス感染予防対策として、政府は今年4月16日に全国都道府県に緊急事態宣言を発令。5月25日は解除されたが、夜の街、とりわけ都心の性風俗業界から客足は急速に遠のき、廃業に追い込まれた飲食店や風俗店が多数あった。


性風俗産業に従事するCSW(コマーシャル・セックスワーカー)は、厳しい規制のある都心を離れ地方へ出稼ぎに行ったり、店舗を持たない性的サービスを行うデリバリーヘルスに流れたり、SNSなどを介してフリーで営業サービスを提供する人も増えたという。

「コロナ以前から、性風俗業界では働く女性は稼げる人と稼げない人では二極化していました」と話すのは坂爪真吾氏=写真。


1110坂爪真吾 一般社団法人ホワイトハンズ代表理事

一般社団法人ホワイトハンズの代表理事で、新しい性の公共をつくるというミッションを掲げ、さまざまな活動を展開している。2015年に開設した「風テラス」では風俗で働く女性のための無料生活・法律相談サービスを行ってきたが、コロナ禍での4月の相談件数は過去最大に跳ね上がったそうだ=グラフ参照。

1110相談数 グラフ



その相談は、どれも「生きるか死ぬか」というレベルの切羽詰まった内容が多く、弁護士とソーシャルワーカーが生活面やメンタル面を支えるために奔走。コロナ感染防止のため、対面が叶わずオンライン相談がメインであったが、「死にたい」「つらい」との訴えに、無我夢中で対応したと振り返る。

「会社勤めをしている人であれば、1日仕事を休んだとしても、いきなり食べるものを買うお金がない状況になることは、基本的にあり得ません。風俗で働く人たちにとって、仕事の面でもお金の面でも、これまでなんとなくやってきたことが、コロナの影響で全てうまく回らなくなってしまった。経済的困窮や、社会的差別、孤立化など、もともと抱えていた問題が、コロナ禍でより明確に浮かび上がってきたと感じています」(坂爪氏)。

他にも店でコロナウイルスの陽性者が出たためネット上で“炎上”した、お客さんから罵倒された、自粛せずに営業していたら店がバッシングに遭った、といった、コロナ関連の人権侵害も目立ったという。

最近になって、「風テラス」への相談件数もやや落ち着きつつあり、コロナ前の相談内容であった、店舗トラブルや借金、ネットでの誹謗中傷などに戻ってきたというが、コロナが再燃の兆しを見せており油断できない。実際、11月に入って北海道では新規感染者が100人超の日が増え、ススキノでクラスターが確認されている。

「緊急事態宣言が解除されたら、お店の営業が再開されて、お客さんが戻ってくるという楽観的な人が実は多数派でしたが、現実的には容易ではないでしょう。コロナをきっかけに、これまでの仕事を見つめ直して、今後の人生を変えていかなければ、と思う方もいました」(坂爪氏)。

コロナで浮かび合った、以前からある風俗の世界で働く女性の孤立や情報遮断などの課題。女性たちを支えるネットワークやコミュニティー、専門家に相談でき必要な情報を手に入れられるセフティーネットの存在がいま強く求められている。

(医療ライター・熊本美加)


坂爪真吾(さかつめ・しんご) 東京大学文学部卒。2008年、「障害者の性」問題を解決するための非営利組織「ホワイトハンズ」を設立。新しい「性の公共」を作る、という理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性の無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。



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