コロナ撃退の免疫力アップにウオーキングは最高のワクチン
新型コロナウイルスの感染拡大は「人間、最後にものをいうのは抵抗力」であることを認識させてくれた。そんな今「歩くことで免疫力アップが期待できる」という。その方法とは?
予防がすべて、といっても過言ではない
「残念ながら新型コロナウイルスはすぐには収束しないと私は考えます。毎年冬になるとインフルエンザが流行するように、人は新型コロナウイルスとも共生することとなるでしょう」と語るのは、医学博士の長尾和宏。
100年前に発生したスペインかぜでは、第1波より第2波の方がよほど深刻だったという。アメリカでは第2波の致死率が10倍に跳ね上がった。
むしろ冬がやってくるこれからが勝負どころといえるのかもしれない。
「治療法がない新型ウイルスへの対策は、予防がすべてと言っても過言ではありませんし、仮に感染して自然治癒するかどうかは免疫力にかかっています。ウオーキングは体力、抵抗力、免疫力を上げる最高のワクチンになるんです」(長尾氏)。
頑張りすぎると逆効果
ただし、やみくもに歩けばいいというものではない。過度な運動はかえって感染リスクを高める。
「疲れると、新生児や免疫機能が低下している人に重篤な感染症を引き起こすヘルペスウイルスが増加します。また、過度な運動をすればDNAにダメージを与える活性酸素が増え、老化を早めることにもつながります」
運動習慣と感染リスクとの関係は「Jカーブ」=下の図=で表わされる。
運動不足の人の感染リスクを平均とすると、適度な運動を習慣づけている人は感染リスクが平均以下に下がる一方、過度に運動するとかえって感染リスクは平均よりも高まる。
では、免疫力・抵抗力を上げるためには、どのようなウオーキングを心がければいいのだろうか。歩く時の正しい姿勢は以下のイラストを参考にしてほしい。
「“1日1万歩がウオーキングの常識”といわれた時代もありましたが、本当に大切なのは、寝たきりになるまで毎日歩き続けるという継続性です。とはいえ多忙な現代人に、ただ歩くだけの時間を捻出してもらうのはハードルが高い。出勤時間、買い物時間などを利用して、ちょこまか歩くことを心がけたいですね」
理想的な歩行速度は?
免疫細胞を活性化させる歩行速度は「息が少し弾み汗をかく程度」がベスト。通勤時、ランチ移動時など短時間の歩行を一日に何回も行う「ちょこまか歩き」がオススメ
歩行を習慣化するコツは?
履き心地、性能、デザイン共に自分好みのウォーキングシューズを選ぶこと。多少高価でも自分に合った靴を探すことで、「一駅分歩こうかな」と、ついつい歩きたくなる
歩行に適した時間帯は?
ウイルスは紫外線に弱いため夜間より太陽が出ている時間帯に歩こう。昼間歩くことでビタミンDが活性化し骨も丈夫になるという利点も
足腰に不安がある人は?
プールでの水中ウオーキングでも可。人の手を借りてもいいので5分〜10分でも野外を歩くと免疫力・抵抗力を上げることができる
ウイルスだけでなく病気も予防
人生100年時代を健やかに生き抜くためにも、ウオーキングが鍵となりそうだ。
「老化とは筋肉の減少を指します。筋力が落ちると疾病リスク、転倒リスクが上がる一方、筋肉をつければ、老化のスピードを和らげることができます」
現在、日本では糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病を患う人が右肩上がりで増え続けているが、「ウオーキングに勝る生活習慣病対策はない」と長尾氏。
ウオーキングがメタボリックシンドロームの解消につながることは言うまでもないが、歩いて体重を減らせば、血圧、血糖、コレステロール値、尿酸値も改善するという。
福岡県在住の永谷道昭さん(仮名・75歳)は散歩を半年間継続して行ったところ、体重は70キロから65キロまで減少し、糖尿病の数値が改善された。心身ともに身軽になったことで性格まで明るくなったという。
景気回復のカギに
「歩くことでセロトニンが分泌され、不安や抑鬱感が改善されます。自粛疲れによる“心の不調”を抱える方も、まずは歩いてみてください」
最近では、アップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏(故人)をはじめIT企業の経営者も「ウオーキング会議」を活用しているという。
「歩くことで脳の血流が良くなり、集中力も高まります。いいアイデアが生まれそう」
ウオーキングは、景気回復にも無限の可能性を秘めている。
長尾和宏(ながお・かずひろ)氏
1958年、香川県生まれ。医学博士。東京医科大学卒業後、大阪大学医学部付属病院、市立芦屋病院などで内科勤務を経て現職。地域密着型の外来診療と在宅医療に携わる。臨床の傍ら、精力的な執筆・講演活動を行う。
『歩くだけでウイルス感染に勝てる!』(長尾和宏著、山と溪谷社刊)
歩行によって新型コロナ、インフル、ウイルス感染症を予防、克服する方法を指南。長尾和宏氏の歩くシリーズ第5弾、累計15万部
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