テストステロンとAGA・薄毛の関係性とは?

テストステロンとAGA・薄毛の関係性とは?

テストステロンは代表的な男性ホルモンで、体を健康に保つために重要なものです。しかし「男性ホルモンが多いとハゲやすい」という声も多く、「男らしくなりたいが、薄毛にはなりたくないな」と不安に思う人も多いでしょう。

そこでこの記事では、テストステロンとAGA・薄毛の関係性について論文を参照しながら解説します。

テストステロンは薄毛の原因なの?

男性ホルモン(テストステロン)が多いと薄毛になる、筋トレをすると薄毛になる、という声を耳にすることも多いと思います。しかし実は、テストステロンや筋トレと薄毛には因果関係はありません。では、何が薄毛の原因になるのでしょうか。

テストステロンが薄毛を引き起こすわけではない

実は薄毛や抜け毛を引き起こすのはテストステロンではなく、DHT(ジヒドロテストステロン)です。

DHTは頭部に存在する「5α還元酵素」がテストステロンに作用してできるもので、抜け毛のサイクルを早めてしまいます。いくつかの論文では抜け毛と男性ホルモンについて、以下の結論が出されています。

男性ホルモンは骨・筋肉の発達を促し,髭や胸毛などの毛を濃くする方向に働く。しかし、前頭部と頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては、逆に軟毛化現象を引き起こす。テストステロンから活性化されたdihy-drotestosterone(DHT)が男性型脱毛症の発症に大きく関係している」(引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_78/_pdf

男性ホルモン感受性毛包の毛乳頭細胞には男性ホルモン受容体が存在するが、髭や前頭部、頭頂部の毛乳頭細胞に運ばれたテストステロンはII型5α―還元酵素の働きにより、さらに活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換されて受容体に結合する」(引用:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

つまり、テストステロンは毛を濃くする働きがあるが、前頭部や頭頂部にある5α還元酵素によってDHTに変換されると脱毛に関与するということです。テストステロンが直接、薄毛・抜け毛を促進しているわけではないのです。

筋トレも薄毛は引き起こさない

「筋トレをすると薄毛になる」についてはどうでしょうか。適度な運動はテストステロンを増やすのに有効ですが、上述の通りテストステロンと薄毛に関係はありません。

テストステロンから活性化されたdihy-drotestosterone(DHT)が男性型脱毛症の発症に大きく関係している」(引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_78/_pdf

と論文にあるように、あくまでもDHTが影響して薄毛になるのであり、テストステロンの影響で薄毛になるわけではない点に注意しましょう。

テストステロンを増やすことは薄毛対策になる

テストステロンはむしろ、薄毛対策に有効なホルモンと言えます。テストステロン(=男性ホルモン)の作用については

男性ホルモンは、筋肉増強、変声、発毛など、思春期の男性化を促進する」(引用:https://lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/YNJ/YNJ3-1/image/YNJ3-1-003to008.pdf

とあり、テストステロンは思春期以降の発毛に関与します。

副腎や精巣で作られたテストステロンは、血液に乗って全身に届けられます。テストステロン量が減少すると発毛も減少し、抜け毛・薄毛を引き起こすと考えられます。それぞれDHTや5α還元酵素は少ない方が、テストステロンは多い方が良いと考えられます。

薄毛を予防する・改善するために個人でできること

薄毛を予防する・改善するために個人でできること

それでは薄毛や抜け毛を予防・改善するために、個人でどのように注意しておくべきでしょうか。対策を始める時期、生活習慣、食事についてそれぞれチェックしていきましょう。

対策は薄毛を実感する前から

薄毛対策は、いつから行うべきでしょうか。この疑問について「ヘアラボ」という髪の総合メディアがアンケート調査を行いました。

アンケート調査によると「薄毛が気になりだしてから対策を始めた」と回答したのは59%。しかし対策の時期に関しては男性のうち80.5%が「もっと若いころから薄毛対策をしておけばよかったと感じている」と回答しました。

つまり、抜け毛・薄毛を実感してから育毛剤などで対策をするのでは遅かったと感じる人が多いのです。薄毛対策は髪のボリュームが減少する前に行いましょう。

適度な睡眠や運動で規則正しい生活を心がける

規則正しい生活は薄毛対策に効果的です。それは以下の理由によります。

  • 適度な運動によりテストステロンの分泌が促される
  • しっかり眠ると副腎の機能が回復し、テストステロン量を維持できる

規則正しい生活はストレスを軽減させ、副腎の機能を維持することにつながります。副腎はテストステロンの元となるDHEAが分泌される場所で、薄毛対策にも重要な器官です。

男性ホルモンとDHEAの関係性については【男性ホルモン・テストステロンを作る重要なDHEAとは】にも詳しく解説しておりますが、副腎からのDHEA量が減少するとテストステロン量も減少します。

論文でも「DHEAは性ステロイドのエストロゲンやテストステロンの前駆体ステロイドであり、DHEAの作用機序の一つとして、これら性ステロイドへの転換を介した機序が想定される」(引用:https://www.toukastress.jp/webj/article/2020/GS20-02j.pdf)と言及されています。規則正しい生活をし、DHEAが少ない状態にしないことが大切です。

適度にコレステロールを摂取する

テストステロンの原料は、コレステロールです。日本内科学会雑誌でも「テストステロンは精巣のライディッヒ細胞においてコレステロールより産生される」と明言しています。

コレステロールにはLDL(悪玉)とHDL(善玉)がありますが、低テストステロン状態はLDLコレステロールの上昇とHDLコレステロールの低下と関連があるといわれています。

つまり、HDLコレステロールの不足した生活を送るとテストステロン量が減少する恐れがあり、活力の低下が懸念されます。テストステロン量を維持し健康的な生活ができるよう、HDLコレステロールを上げる食事(魚介類や大豆製品、食物繊維の多い食品)をしっかり摂りましょう。ただし、腹八分目を心がけることも忘れずに。

薄毛治療の方法

薄毛治療の方法

「早くから対策をしたし、育毛剤も使ったのにどうしても薄毛、抜け毛が気になる」。そんな場合は、早めにクリニックに相談しましょう。クリニックでは内服薬、外用薬、植毛、再生医療などの薄毛治療を行っています。

フィナステリド・デュタステリドを服薬する

薄毛治療の主な方法として、フィナステリド・デュタステリドの内服薬があります。この薬は5α還元酵素を阻害し、抜け毛を誘発するDHTを作らせないためのものです。

論文では「軽症から中等症はミノキシジルの外用かフィナステリドの内服を1年間行い、効果が得られれば継続し、反応が乏しい場合には植毛術やかつらの使用を推奨する」(引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_78/_pdf)とされ、治療の第一選択肢となっています。

さらに日本皮膚学会の「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017年版)」ではフィナステリド、デュタステリドともにAランク「強く勧める」に指定され、有効性が評価されています。(男性型脱毛症の場合)

ミノキシジルを塗布する

ミノキシジルの塗布は「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(2017 年版)」で推奨度Aランクに指定されています。

このガイドラインによれば、国外では2%、5%、泡タイプの5%で、国内では1%、5%のミノキシジルを塗布した場合で、それぞれ総毛髪数が増加しました。発毛効果に関して高い水準の根拠が確認されており、ミノキシジルの塗布は発毛に効果的と言えます。

植毛するなら自毛植毛を選ぶ

植毛には自分の髪を使う自毛植毛と、人工毛を使う人工毛植毛があります。日本皮膚学会のガイドラインでは、自毛植毛がBランク「行うよう勧める」、人工毛植毛はDランク「行うべきではない」とされ、人工毛植毛よりも自毛植毛が推奨されています。その理由として、安全性や有効性が挙げられます。

自毛植毛は2015年には世界で39万7048件行われました。その生着率は82.5%とする報告もあり、効果に対して十分なエビデンスが得られています。対して人工毛植毛は多くの有害事象が報告されており、アメリカの食品医薬品局では有害器具として指定され禁止されているほどです。

植毛をするのであれば人工毛は避け、自毛植毛を選ぶべきでしょう。

自毛植毛がどのような特徴を持っているのかは【薄毛で悩んでいる人におすすめ!自毛植毛を徹底解説】で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。

まとめ

「テストステロンは薄毛の原因」と誤解されやすいですが、薄毛の実際の原因はDHT(ジヒドロテストステロン)です。筋トレなどでテストステロン量が増えても薄毛に直結するわけではないので、安心してください。

対策をしているのに薄毛・抜け毛の進行が止まらない悩みを持つ人は、早めにクリニックで相談してみましょう。

  • 参考文献
    ・男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017年版 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
    ・男性型脱毛症治療の現状と今後の展望 https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/133/2/133_2_78/_pdf
    ・DHEA:酸化・糖化ストレスと糖代謝に対する影響 https://www.toukastress.jp/webj/article/2020/GS20-02j.pdf
    ・日本内科学会雑誌 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/4/102_914/_pdf
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