テストステロンの補充に使われる貼り薬(パッチ)とは?

テストステロンの補充に使われる貼り薬(パッチ)とは

テストステロンは男性が健康的に過ごすために需要なホルモン。テストステロンが不足し不調になった場合、病院やクリニックでは、医薬品を用いてテストステロンの補充療法が行われます。

テストステロンの補充療法では注射剤、塗り薬、内服薬が代表的ですが、海外では「貼り薬(パッチ)」も使用されることがあります。

今回は、海外で使用されている貼り薬について紹介するとともに、国内で使用可能なのか、その他の補充療法のメリット、デメリットも合わせて紹介します。

貼り薬はアッヴィ社のアンドロダーム

テストステロン補充療法に使用されるパッチ剤として知られるのは、米国に本社を置く「アッヴィ」社が開発した「アンドロダーム」です。

これはテープに薬剤を塗布してある医薬品で、皮膚に貼り付けて使用します。塗り薬と同様に皮膚から薬剤が吸収されて血管に入ることで作用を発現します。

1日1回の使用で皮膚からテストステロンを補充でき、内因性テストステロンの欠乏によるテストステロン補充療法に使用されます。副作用としても最も多いのはかゆみで使用者の12%、その次が中等度または重度の紅班で、使用者の3%にみられると報告されています。

インスリンやプロプラノロール、コルチステロイドで相互作用が起きる可能性があるので、服用している医薬品がある場合には注意が必要です。前立腺がんを患っている人や妊婦、乳がんの男性には使用できないとされています。

アンドロダームは国内未承認

1日1回の使用で皮膚からテストステロンを補充でき、注射剤のような痛みもないメリットがある貼り薬ですが、日本では残念ながらアンドロダームを含むテストステロンの補充療法のための「貼り薬(パッチ)」の使用は承認されていません

欧米では承認されているため、海外では使用している人も少なくありませんが、日本で承認されているテストステロン製剤は注射剤と内服薬、塗り薬のみです。つまり、医療機関でも入手することは不可能です。

国内の補充療法は3種類

次に、日本の医療機関で行われているテストステロン補充療法をみてみましょう。主に3種類の方法があります。

注射剤

テストステロンの補充療法の注射剤

テストステロンの補充療法として最も一般的なものは、エナルモンデポー筋注(筋肉注射)という注射剤です。補充に即効性を求める人には大変有効です。

エナルモンデポー100mgの筋注では血中テストステロン値が7日目に最大に達します。その後、約2週間かけて成分が徐々に放出されるため、

  • 125mgの場合は1回の筋注を1〜2週間ごと
  • 250mgの場合は1回の筋注を2〜4週間ごと

に注射します。年齢、症状により量や回数は変わりますが、注射剤での補充療法は数週間ごとに1回で済むメリットがあります。

注射剤は消化管からではなく血管から直接吸収されるので、初期段階の肝臓による代謝を回避できます。また、投与速度を調節しやすいので他の治療方法に比べると高い効果を見込めます。しかし、病院・クリニックでしか注射はできません。

内服薬

テストステロンの補充療法の内服薬

注射剤に比べると一般的ではありませんが、痛みがなく補充できるため、利用しやすいのがメリットです。

口から消化管を通って小腸で薬物が吸収されますが、肝臓での代謝を受けるので効果の発現が不安定になりやすいというデメリットがあります。

日本国内で承認されている経口薬には、エネルファ錠というものがあります。ただ、肝毒性があるため肝障害の患者さんには原則使用できないことになっています。

塗り薬

皮膚から吸収され、テストステロンが血管に入ることで作用を発現します。

注射剤と同様に初期段階の肝臓による代謝を避けられるほか、内服薬とは異なり、飲み合わせの心配や食事による影響も少ないので、ライフスタイルに合わせて使用できるメリットがあります。

皮膚の部位によって薬効成分の吸収率は異なり、腕の内側での吸収率を1としたときに陰嚢での吸収率は42倍にもなります。一般的に病院・クリニックで処方される塗り薬では、上半身の皮膚の薄い箇所、腕の内側などに塗り込むように説明されることが多いようです。

「グローミン」など、一部のドラッグストアなどで販売されているテストステロンの塗り薬は、病院・クリニックで処方される塗り薬と比べ有効成分の量が少ないものです。

塗り薬については【テストステロンを補充するクリームやジェルについて解説!】でも国内の塗り薬の種類も含め、詳しく紹介しているので、ご覧ください。

テストステロン補充療法で保険適応は注射剤だけ

テストステロン補充療法で保険適応が認められている医薬品は、注射剤だけです。また、保険適応となるのは男子性線機能不全などの診断を受けた場合に限ります。

まずは医療機関を受診しよう

まずは医療機関を受診しよう

国内のテストステロン補充療法で使われる医薬品は注射剤、内服薬、塗り薬に限られます。

どの薬剤が自分に合っているかは医師の判断に従いましょう。泌尿器科やメンズヘルス外来などの診断・治療が受けられる病院やクリニックを受診し、治療が必要な場合は適切な薬剤を処方してもらいます。

ただし、悩んでいる症状がテストステロンの減少が原因だとは限りません。気力の低下や記憶力・集中力の低下、ED(勃起不全)などはうつ病から起因している場合もあるので、専門医に診察を受けることが重要です。

  • 参考文献
    ・テストステロン軟膏共同研究グループ https://daito-p.co.jp/gm/JSIR_vol20_1_13_18_2005.pdf
    ・エナルモンデポー筋注 https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/medley-medicine/prescriptionpdf/470007_2461400A1079_1_04.pdf
    ・naturejpn https://storage.googleapis.com/natureasia-assets/ja-jp/ndigest/pdf/v1/n11/ndigest.2004.041106.pdf
    ・日経メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/nejm/200811/508682.html
    ・Androderm https://www.androderm.com
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