アロマテラピーでテストステロンを上げることはできるか?

堀江メソッド筋トレ20230111/アロマイメージ

今回は「アロマテラピー」について説明しましょう。アロマテラピーは心身のさまざまなトラブルを穏やかに改善することが期待できる自然療法です。

アロマテラピーという言葉は1930年頃にフランスで生まれましたが、それ以前にもアロマは生活の中で利用されていました。古代エジプトの壁画には香油の壺や香炉が描かれたものがあり、香りを心身の治癒に役立てようという考え方は数千年前からあったようです。

南フランスに興味深い逸話があります。17世紀にペストが流行した頃、ペスト患者の死体から金品を奪っていた4人の泥棒が捕まりました。当局は彼らの死刑を免除する代わりに、なぜ彼らはペストにかからなかったのかを尋問しました。彼らは、アロマテラピーでも使うローズマリー、タイム、セージ、ミント、ラベンダーなどのハーブを酢につけこんだハーブビネガーを全身に塗っていたと答えたそうです。この逸話の真偽は定かではありませんが、これらのハーブはどれも殺菌成分を含むものとして有名です。

そんなアロマテラピーですが、実はテストステロンの改善も期待できることがわかっています。

公益社団法人日本アロマ環境協会と長崎大学大学院医歯薬学総合研究科神経機能学の篠原一之教授の共同研究(2019年)で、ある種の精油の吸入が女性におけるテストステロン値濃度を優位に増加させることが確認されました。

この実験では、40代女性15人に10種類(イランイラン、クラリセージ、ジャスミン・アブソリュート、スイートオレンジ、ゼラニウム、ネロリ、フランキンセンス、ラベンダー、ローズオットー、ローマンカモミール)の「溶媒で希釈した精油」または「精油のみ」を20分吸入してもらい、吸入の前後での唾液中のテストステロンを測定しました。

その結果、10種類の精油のうち、ジャスミン(アブソリュート)精油、ローマンカモミール精油、クラリセージ精油吸入後の唾液中のテストステロン濃度が有意に上昇したそうです。これは男性でも同様の効果が期待できそうです。

テストステロンは主に睡眠中に作られるため、睡眠の質を上げることはとても大切ですが、アロマテラピーでは睡眠の質の改善も期待できます。特にラベンダー、ベルガモット、イランイランが適しています。また、集中力を高めたい時にはペパーミントやローズマリーがおすすめです。

テストステロンアップに有効である筋トレには、ヒノキ科のジュニパーベリーの香りがおすすめ。ある研究によると、筋肥大や筋萎縮抑制に影響する体内の「SRF(血清応答因子)」を活性化することがわかっています。このジュニパーベリーはお酒のジンの香り付けに使われていますので、“ジンの香り”でわかる人もいると思います。

アロマテラピーの研究は進んでおり、医療現場でも徐々に取り入れられています。

【一般社団法人1UP学会】 男性医療に関する最新医療技術や情報の啓発・広報活動を行う医療専門団体。テストステロン補充療法による専門外来を東京都千代田区の日比谷国際クリニック(http://www.hibiyakokusai.or.jp)で実施している。

■堀江メソッド

関西医療大学の研究によると、ラベンダーの香りには抗けいれん作用、鎮静作用、抗不安作用があることがわかっていますが、作用機序はまだはっきりしていません。アロマテラピーには未知の部分がありますが、良い香りを感じて気分が良くなったり、心がリラックスした実感は誰もがお持ちだと思います。

あまり難しく考えず、部屋や車の中に好きな香りを加えてみてはいかがでしょうか。アロマの効果で生活の質向上も期待できそうです。


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この記事の監修者

堀江 重郎

堀江 重郎

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会理事、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。


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