【全文掲載】男性の健康と幸福を語り合う「男塾」第4回《テストステロン補充の最新情報》#03

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テストステロン補充療法をすると血圧も低くなってくるといったデータがあります。これは現在、順天堂大学浦安病院の辻村先生の研究の内容です。中高年以上の人でテストステロンが下がってくる人の診断のポイントとしては、40歳以上で、先ほどお話した肥満というのもあるんですが、同時にやはり性欲が下がってくる。勃起があまりうまくいかない。

つまり朝立ちですね。morning erection。この回数が減少するということが非常に鋭敏にテストステロンの低下を示しているという風に言われています。 

それから検診ですね。コレステロールが高いと指摘される人はすごく多いと思うんですが、このコレステロールが高い人も実はテストステロンが下がっていることが多いんです。

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これはいわゆる悪玉コレステロール、LDLコレステロール、皆さんご存じの方も多いと思います。動脈硬化を促進して最終的に脳梗塞や心筋梗塞になりやすいということが言われていますが、最近分かってきたのは、ダイエットで糖質制限をすると実はこの悪玉コレステロールが高くなるというのです。

皆さんはコレステロールが高いと言われると「ちょっとラーメンをやめておこうかな」とか、「とんかつを控えようかな」とか、何となく「脂肪をちょっとカットしよう」と思われるかもしれません。 実はこれ、あんまりお医者さんがはっきり言ってくれないことが多いんですが、コレステロールが高いということと、油が多いご飯を食べるというのは直接は関係ないんです。 


カロリーとしては関係あります。高カロリーはコレステロールを高くするのですが、脂肪の多い食事とは直接は関係ありません。 コレステロールが高くなる場合は、肝臓が工場としていろいろな反応を起こしていくんですけども、食べ物を吸収して消化していく機能、これを代謝と言いますが、その機能が衰えてコレステロールが高くなると言われています。 

肝臓の組織の中のミトコンドリア、これは筋肉や神経にもありますが、その細胞の発電所みたいな部分のミトコンドリアの機能が低下していることが大きな原因だと言われています。このミトコンドリアに関係しているのがテストステロンです。 


ですからテストステロンが低くなるとコレステロールが上がってくる。同時に筋肉のミトコンドリアも作用が低くなってくると筋肉の力が低くなってくるということになります。



テストステロン補充療法

テストステロンを補充する治療の歴史はかなり古いです。第二次世界大戦の前、当時は注射ですけれど、テストステロンを補充することでいろいろな男性の不定愁訴、特にうつ病を改善するということが知られていました。


昔はうつ病のことを神経衰弱と呼びました。今、神経衰弱というとトランプのゲームですが、この神経衰弱を改善するということが知られていました。国際的には、注射、飲み薬、塗り薬、貼り薬など、いろいろなものがあります。 


ただ、皆さんご存じの通り、オリンピックの選手はこのテストステロンを補充することはできません。これはドーピングだと言われているんですね。あるいは国際的な競技団体も禁じています。スポーツの規定と、テストステロンが低い人が補充するということは別物なんですが、どういうわけか日本だけが、この補充療法はこれまで盛んではありませんでした。 


これは何らかの社会背景、恐らくは人口が多かった時代には定年制というのがしっかりあって、55歳で退職をしてたんですね。55歳でもう次の世代に譲ってくれということもあって、テストステロンを積極的に補充して、いくつになっても頑張ろうという状態ではなかったからじゃないかと思います。 

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世界的によく使われている薬としては、日本でいうバンテリンのような非常に塗心地が似ているサラサラしたゲル。3カ月間有効な注射、 あるいは飲み薬などが世界的には使われていますが、残念ながら日本では使うことは認められていません。 

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日本で使われるのは原則的に上図のような注射剤ですね。筋肉に注射する、結構痛い注射剤です。もう40年近く前に承認されているんですね。
注射すると急に濃度が上がって、また下がってしまうという特徴があります。それからもう一つ、テストステロン軟膏もあります。 これは1%の低用量の軟膏なんですが、一部の薬局で手に入ります。


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テストステロンのエナルモンデポー剤を注射すると、バーんとものすごく高く上がって急に下がってしまうといったことが報告をされてきています。上がる時は調子がよくなるんですが、ものすごく高くなってしまうですね。一方、急激に下がってしまうと、かえって症状が悪くなってしまう。これがエナルモンデポーの治療の問題点です。


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そこで我々は新しいテストステロン・ゲルを開発しました。吸収力が非常に高く、ベタつかない。筋肉でも吸収できるということで、少し多めに塗ると、1時間でものすごく吸収量が高くなります。これを毎日塗れば数値がずっと高くなっていくわけですが、1回塗ると大体2日ぐらいで元に戻るというものですね。 

このゲルの開発は厚生労働省とも相談しながら行っていますが、日本メンズヘルス医学会の方でもテストステロン治療認定医という制度を作り、しっかりと研修を受けていただいた先生方に今後使っていただくという予定にしております。現在はまだたくさんの量を作るという段階ではありませんが、来年には恐らく全国いろいろなところで使えるようになってくると思われます。 

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その補充をした効果ですね。医学的にはっきりと分かっていることは、筋肉量が増える、骨の量が増える、性機能が高まる、ということですね。

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これをエビデンスというふうに言いますが、筋肉が付いて、脂肪が減る、体組成が変わる、男性機能が高まる、それにエクササイズをプラスすることでより筋力がアップする。普通にエクササイズをするだけよりも、かなり筋力が付いてきます。酸素摂取能力も高まってきます。糖尿病の境界型の人も改善してくる。コレステロールが高いと言われている人も改善してくることが、すでに認められています。

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上図は先ほどお話した体組成と筋肉量の変化です。患者さんを2つのグループに分けて、片方はテストステロンを投与、 片方は非常によく似ていますが中身は入っていない。これを見ると3年で3キロぐらい痩せてこの間に筋肉が2キロ付いたというデータも出ています。 

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主観的な効果についてです。私はいろいろな患者さんを診ていますが、補充をすると眠りが深くなる、そしてストレスが減ってきますね。他人の言葉にくよくよしない、不安が減ってくる、集中力がついたり意欲が出たり自信が出てくる。
そして性欲が出る。
こういったことをよく聞きます。主観的な症状では数字が高いほど症状が強いんですけれど、大体半年間治療していくことによって、ほぼ正常な形で治療効果が改善してくるということが分かっています。 

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#04に続く

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