SNSを誹謗中傷の「武器」にしている人たちに恐怖感
最近の若い人は、テレビはもちろん、ネットニュースすらあまり見ず、SNSで拡散している話から情報収集をしている人が多いといいます。そんな風潮が怖いなあと思う出来事がありました。
先日、男性が痴漢をしている動画がSNSで瞬く間に拡散されました。投稿は、その男性と思われる個人情報(勤務先や本名や家族の写真など)も付記されていました。痴漢は、もちろん犯罪ですし、この動画の情報が事実だとすれば、この人物もその行為も断罪されて当然です。
そして、こうした事実が広まることが、痴漢の抑止や撲滅につながるキッカケになる面もあるでしょう。実際、SNSでは、「(拡散は)被害者の気持ちを考えたら当然だ」といった声が目立ちました。
その一方で、私が気になったのは、その男性の家族までが晒されていたことです。「悪者の個人情報はなんでも白日の下に晒せ」とばかりに、男性の妻のアカウントまで特定され、罪のない妻や子どもが情報被害に遭っていました。
こうしたSNS上の“ネット警察”が暴走する場面を目にすることが増えました。容疑者の家族や勤務先、知人・友人にまで被害が及ぶ例が後をたちません。“誤爆”もあります。容疑者と同姓同名の別人のアカウントや写真がSNSで晒されて、拡散されることも多々あります。
SNSには弱者の「声なき声」を救いあげたり、告発したりするメリットも、もちろんあります。「痴漢はダメ!絶対」「痴漢は大迷惑」ということが、広く届くことは賛成ですが、この武器は、使い方しだいで、罪のない誰かの心に刃を突き刺している可能性が十分あるのです。
私がもし、いわれなきことや、世間を騒がした人とのわずかな接点からSNSで叩かれたりしたら…と想像すると、本当に恐ろしいし、だれもがそうした可能性と隣り合わせにいると思います。SNSでの過度な誹謗中傷を目にするたびに、SNSに対して恐怖感を抱きます。
この記事のライター
工藤 まおり
フリーランスライター。津田塾大学数学科卒。大手人材会社を経て、セクシュアルウェルネスメーカー、TENGAの広報に転職。女性向けセルフプレジャー・アイテムブランドirohaのPRなどに携わった後、この春フリーランスに。PR業務、恋愛・性・キャリアに関するコラムを執筆。
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