免疫力を高めるのに最低限必要な「抗体」の知識

2020/07/13 免疫力向上

堀江重郎


新型コロナウイルスの「抗体検査」が話題だ。さまざまな感染症から身を守る免疫力を高める方法を学ぶ前提として、今回は「抗体とは何か」について、男性医療の第一人者である順天堂大学医学部の堀江重郎教授=顔写真=に解説してもらう。


梅雨の晴れ間にビタミンDを補給を

梅雨の合間の晴れ間は、風もまだ爽やかです。湿度が低いとすがすがしく感じますが、紫外線が最も強いのが6-7月です。


紫外線はからだの中でビタミンDを活性化してくれます。ビタミンDはサケ、マグロ、サバ、タラに多く含まれており、骨を丈夫にする、免疫力をつけることから、戦争前から昭和40年代くらいまでは給食と一緒に肝油ドロップが配られていました。懐かしく思う人もいるでしょう。


梅雨の晴れ間にはぜひ日にあたって、ビタミンDを蓄えましょう。また新型コロナウイルスは紫外線に弱いので、マスクの日光消毒も有効です。


PCR検査、抗体検査、抗原検査それぞれの違いは?

ところで、ウイルスの検査では、ウイルスの遺伝子を検出するPCR検査に加えて、抗体検査、抗原検査などがあって混乱します。


ごくごく簡単に整理すると、からだの中にウイルスが侵入したとき、ウイルスの遺伝子を検出するのがPCR、ウイルス自体のたんぱく質を検出するのが抗原検査、そして、ウイルスに感染したことを免疫細胞が記憶したかを調べるのが抗体検査です。


例えば、インフルエンザにかかったかなというときに調べるのは抗原検査です。また予防接種を行うはしか(麻疹)、水ぼうそう(水痘)、風疹では、1回ワクチンで免疫すると抗体ができます。その後に感染しても、ただちにこの抗体が働いて病気になりません。この抗体の有無を調べるのが抗体検査です。


抗原検査ではコロナウイルスに今かかっているかどうかを知ることができます。一方、抗体はすでに一度かかって、抵抗力がある状態といえるでしょう。


新型コロナは終生免疫を得られるのか?

東京都の住民に抗体検査をしたところ、人口の0.1%に抗体があることがわかりました。東京の1000人に1人がかかっていたことになります。東京の人口は1400万人ですから、1万4000人程度が、気づかないうちに感染したことになります。


この原稿を書いている6月17日での東京の感染者数は5633人ですので、診療を受けてコロナウイルス感染が分かった人の約3倍の人が感染していたことになります。


ただし、コロナウイルスの抗体が、はしかのように1回かかると終生免疫を得るかどうかはまだ分かっていません。インフルエンザでは、ワクチンを打っても、高齢者では抗体は数カ月後に消えてしまうことが多いと言われています。従って今回のパンデミックの初めにかかった人はもう抗体がない可能性もあります。


おそらく、実際の感染者はもっと多いのでしょう。それでも日本やアジアの国では感染者や死亡者が少ないことが注目されています。ウイルスのかかりやすさには人種、民族単位での遺伝子のちょっとした違いがかなり影響することが指摘されています。世界中でこの研究が加速していますので、「俺はコロナにはかかりにくい」ことがわかるのもそう遠くはありません。


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この記事の監修者

堀江 重郎

堀江 重郎

1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得。国立がんセンター中央病院、杏林大学講師を経て帝京大学医学部主任教授に就任し、日本初の男性更年期外来を開設。2012年に順天堂大学医学部教授に就任。日本抗加齢医学会理事、日本Men's Health医学会 理事長を務める。『ホルモン力が人生を変える』他著書多数。テレビ番組の出演、監修も多数。

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