ビタミンDへの医師たちの無知・誤解を解く〜紫外線と皮膚がん、処方薬とサプリの驚くべき真実

2021/02/08 免疫力向上

男の底力上げる20210125/イメージ

「本来“お日様さまの下”で生活してきた人間が、現代は“建物の中”で暮らしている。それだけでも日を浴びる時間は短くなり、紫外線を浴びることで生成されるビタミンDは不足する」

アンチエイジング医療の第一人者でビタミンDの効用を説く満尾クリニック院長の満尾正医師はこう語る。では、ビタミンD不足は、現代人にどんな影響をもたらすのか。



日本の子供で「くる病」が増加

あまり知られていないのですが、近年、日本人の子供に「くる病」が増えています。それも、わずか10年の間に2倍、3倍というペースで増えているというのです。

くる病とは、リンやビタミンD不足が原因で骨が弱くなり、身長が伸びない、脚が曲がったまま成長するなどの症状を引き起こす病気です。

子供の体内でビタミンDが不足する理由はいくつか考えられますが、特に問題視されるのが「母親のビタミンD不足」です。現代の女性は日焼けを恐れて紫外線を避けるため、それだけでビタミンDが不足しています。当然、母乳に含まれるビタミンDも少なくなるため、それを栄養源とする乳児はビタミンD不足になるのです。

なぜ日本の医師はビタミンDに無関心か

これは大変深刻な状況です。昨年来のコロナ禍で、世界の医師たちはビタミンDに目を向け始めましたが、なぜか日本の医師は無関心のまま。栄養学に興味を持たないので、ビタミンDに対する正しい知識がないのです。

栄養学の知識を持たない医師は、口をそろえてこういいます。「ビタミンDも大切だが、紫外線を浴びすぎると皮膚がんのリスクが高まる」「どうしてもというなら、健康保険で処方できる安いビタミンDがあるから出しておきましょう」

深刻な皮膚がんと紫外線は無縁?

これは明確に反論できます。確かに紫外線と皮膚がんには関係がありますが、皮膚がんで最も悪質なメラノーマ(悪性黒色腫)の好発部位をご存じでしょうか。このがんが一番できやすいのは「足の裏」なのです。つまり、体の中で最も日に当たることの少ない部位にできるがんが、紫外線によって起きるという話には無理があるのです。

紫外線を過度に浴びると、脂漏性角化症という皮膚の変異が起きやすくなり、これがメラノーマの前がん病変であることは確かです。しかし、脂漏性角化症ができた時点で的確な治療をすれば、問題ありません。紫外線を親の仇のように嫌う必要はないのです。

健康保険処方と食事、サプリの違い

ビタミンD製剤の話に至っては、まさに栄養学の知識のなさを露呈しています。

健康保険で処方できるビタミンDは「活性型」で、私たちが普段の食事やサプリメントで摂取するのは「非活性型」。同じビタミンDでも、仕組みがまったく異なるのです。ちなみに紫外線を浴びた皮膚で生成されるビタミンDも「非活性型」です。

ビタミンDの過剰摂取による危険性を指摘する人もいますが、これは活性型のビタミンDを大量に取り過ぎたときの話。したがって、健康保険で処方できるビタミンDを安易に使うことは危険なのです。

その点、非活性型なら必要な分だけが吸収され、余ったものは自然に排泄されます。こうした基本的な知識を持つ医師が圧倒的に少ないことを私は深く憂慮しています。

(構成・中井広二)

【満尾正医師】 1982年、北海道大学医学部卒業。杏林大学救急医学講師、米ハーバード大学外科栄養代謝教室研究員、救急振興財団教授を経て、2002年、キレーション治療を中心とした抗加齢医療専門クリニック「満尾クリニック」を開業し院長。日本抗加齢医学会認定医。米国抗加齢医学会認定医。医学博士。最新刊に「医者が教える『最高の栄養』」(KADOKAWA刊)。


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