幹細胞治療をED、AGAに応用する「修復医療」

2021/01/14 免疫力向上

男の底力2021年1月14日乳歯

再生医療の柱として期待される「幹細胞治療」。すでに虚血性心筋症などの治療への導入が検討されているが、この新技術をED(勃起不全)やAGA(男性型脱毛症)の治療に応用する試みが始まっている。その先駆者である銀座ソラリアクリニック特別顧問で泌尿器科医の古賀祥嗣医師が解説する。



EDもAGAを根本的に解決する

EDもAGAも治療薬はあるものの、その効果は個人差が大きく、限界があるのが事実です。何よりの問題は、これらの薬は「投薬をやめれば元に戻ってしまう」という点。つまり対症療法に過ぎないのです。

そこでいま注目を集めているのが、これら中高年の男性を悩ませる症状を根本的に解決する治療法の確立。その先頭を走っているのが幹細胞治療です。

幹細胞が分泌する物質に着目

前回も解説した通り、幹細胞治療にはいくつかの種類があります。現在研究が行われている幹細胞を用いた治療は、「再生医療」に用いられるものが多く、その成果は一進一退といったところです。幹細胞そのものを移植しても、その細胞が本来の目的とする臓器に辿り着く可能性が低いことが一番の原因です。

ただ、移植した幹細胞自身が何らかの生理活性物質を分泌し、その成分が治療に役立つ働きをしていることも見えてきました。

パラクライン効果を治療に活用

この作用を医学的に「パラクライン効果」と呼び、これを使った治療法の開発に向けた研究も進んでいます。iPS細胞が分泌する生理活性物質の働きで心機能を改善させる臨床研究が承認されるなど、その臨床導入も現実味を帯びています。

そして、この仕組みをEDやAGAの治療にも応用できる可能性が出てきました。幹細胞治療の技術が男性のアンチエイジングに取り入れられ始めたのです。

乳歯をもとに培養上清液

私が特別顧問を務める銀座ソラリアクリニックでは、人間の「乳歯」に含まれる歯髄幹細胞を培養する際に作られる液性成分(培養上清液)を利用する、パラクライン効果を狙った幹細胞治療に乗り出しました。「SORALIA Growth Factor=SFG」と名付け、2016年から実施しています。

パラクライン効果に必要な幹細胞培養上清液は、歯髄、骨髄、脂肪、臍帯などの幹細胞を利用して作られますが、その中でも特に生理活性物質の量が多いと報告されているのが乳歯です。

「修復医療」の新分野へ

SFGを点滴、局所投与、点鼻などの方法で投与すると、その生理活性物質が患者の幹細胞に作用して、機能が低下した細胞の改善を促進します。つまり、「修復医療」という新しい分野の医療が実現したのです。

私たちは、この治療法をEDやAGA治療に応用することにしました。それまで対症療法しかなかったこれらの疾患に、侵襲(身体的ダメージ)が小さく、副作用の危険性も限りなく低い、修復医療による根本治療の可能性が出てきたのです。

次回は、EDやAGAに対するSFG治療の実際を詳しくお伝えします。

(構成・中井広二)


【古賀祥嗣医師】 銀座ソラリアクリニック特別顧問。江戸川病院泌尿器科主任部長兼透析センター長・移植再生医療センター長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本透析学会専門医・指導医。日本移植学会専門医。医学博士。著書に『20歳若返る デキる男のアンチエイジング』(イースト・プレス刊)他。

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