EDとAGA両方に光明!根本解決目指す最新治療

2021/01/03 免疫力向上

男の底力2021年1月3日幹細胞

前回まで、ED(勃起不全)とAGA(男性型脱毛症)という中高年男性が抱える2つの身体的悩みを、医学的な視点から分析してきた。今回は、これらの“疾患”に対する最新の治療法について、銀座ソラリアクリニック特別顧問で泌尿器科医の古賀祥嗣医師に解説してもらう。



ED、AGA治療薬は根本的な解決にはならない

EDにはバイアグラやレビトラ、シアリスなどの飲み薬、AGAにはやはり飲み薬のフィナステリド(プロペシア)や外用薬のミノキシジル(リアップ)があります。これらを使用している人は少なくないと思います。

効果には個人差があり、大いに満足している人もいれば、あまり実感できていない人もいるでしょう。というのも、これらの医薬品はいずれも対症療法として用いられるもので、根本から解決するものではないからです。

幹細胞を用いた「根本治療」法を開発

では、EDやAGAには根本治療は存在しないのでしょうか? 実は、そんな症状を根本的に改善する、「幹細胞」を用いた治療法が開発されているのです。

幹細胞と聞くと、iPS細胞(多性能幹細胞)やES細胞(胚性幹細胞)を思い出すかもしれません。これらは人間の体や臓器を構成する大元の細胞で、これを特殊加工して体内に投与(移植)することで、欠損したり障害を負っている組織を再生させることを目的とした治療法、つまり「再生治療」に用いられる幹細胞です。

劇的な治療効果はまだないが…

世界中の病院や研究機関で、さまざまな疾患への臨床応用に向けた取り組みが進められていますが、現状ではまだ劇的な治療効果は認められていません。

その理由は、静脈注射で幹細胞を移植しても、その大半が体内で死滅してしまい、生き残ったわずかな幹細胞も、肺の毛細血管で捉えられて、目的の臓器までたどり着かないため、と考えられています。

最新研究で「光」が

では、これらの幹細胞治療はまったく意味がないのかといえば、そんなこともありません。多少の効果は見られることがあるのです。実は、幹細胞自身が分泌する物質があり、この物質が治療効果に何らかの形で寄与していることが、最近の研究で分かってきたのです。

幹細胞は、数百種類のサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)や成長因子、ケモカイン、エクソソームといった多くの生理活性物質を分泌しており、幹細胞移植を行うと、これらの物質が幹細胞から出ることで細胞に作用していると考えられます。

幹細胞が分泌する物質に治療効果期待

つまり、幹細胞そのものではなく、幹細胞が分泌する物質に治療効果が期待できるのです。

投与した細胞からの分泌物が、投与を受けた細胞に作用して何らかの効果を示すことを「パラクライン効果」と呼びます。この仕組みを用いて、シート状に加工したiPS細胞を虚血性心筋症の心臓に貼り付け、iPS細胞が分泌する生理活性物質の働きで心機能改善をはかる臨床研究も始まっています。

そこで、この仕組みをEDやAGAに応用しよう、という機運が高まっているのです。

次回は、私が特別顧問を務める銀座ソラリアクリニックにおけるEDとAGAに対する幹細胞を用いた根本治療について解説します。

(構成・中井広二)


【古賀祥嗣医師】 銀座ソラリアクリニック特別顧問。江戸川病院泌尿器科主任部長兼透析センター長・移植再生医療センター長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本透析学会専門医・指導医。日本移植学会専門医。医学博士。著書に『20歳若返る デキる男のアンチエイジング』(イースト・プレス刊)他。

  • はてなブックマークに追加

RECOMMEND

-AD-