AGA治療薬の効果と限界、そして最新の治療法とは?

2020/12/28 免疫力向上

男の底力上げる20201207/AGA

中高年男性を悩ます2つの悩みについて、銀座ソラリアクリニック特別顧問で泌尿器科医の古賀祥嗣医師に、アンチエイジングの観点から検証してもらっている。前回のED(勃起障害)に続いて、今回はAGA(男性型脱毛症)がテーマだ。



薄毛を自覚している人は1260万人!

少し古いデータですが、2003年に行われた意識調査によると、当時の日本の成人男性4200万人のうち、「薄毛を自認している人」は1260万人、「薄毛を気に病んでいる人」は800万人。そのうち650万人が何らかの薄毛対策を経験している―とする結果が出ています。

この調査の後、日本人の平均寿命は延び、高齢化も進んでいることを考えると、「薄毛人口」がさらに増加していることは間違いなさそうです。

AGAの「仕組み」とは

近年、「AGA」という言葉はかなり普及しましたが、その仕組みを正しく理解している人は意外に少ないようです。AGAは、男性ホルモンの代表格「テストステロン」の影響で薄毛になる疾患のこと。仕組みを詳しく説明しましょう。

テストステロンが血流に乗って細胞に入ると、酵素が作用してジヒドロテストステロン(DHT)というホルモンに変わります。このDHTは細胞内の受容体と結合して、さまざまな作用を引き起こします。

毛根の寿命が尽きるまで

DHТは前立腺の成長促進や精子の形成など、男性にとって重要な働きを示します。一方、頭皮の毛母細胞に入り込むと、受容体と結合して細胞分裂を阻止してしまいます。毛母細胞は毛髪の新陳代謝の大元。この細胞が分裂できないと、髪は育たなくなってしまいます。

AGAの起きている頭皮では、毛根の根っこにあたる「毛乳頭」の細胞でTGF-β1という「細胞の自死(アポトーシス)」をつかさどる因子が作られ、これがFGF-5というもう一つの因子に「髪を成長させるな」という指令を出すことでAGAが進んでいきます。

この流れが動き出すと、髪本来の新陳代謝のサイクルが乱れて、毛根の寿命が尽きてしまうのです。

AGA治療薬の限界

AGA治療薬は、テストステロンがDHТに変換するのを抑制する作用を持っています。つまり、AGAのサイクルの最初の部分に作用することで、抜け毛の流れを食い止める治療なのですが、当然のことながら毛母細胞が完全に機能を無くしてしまえば治療効果もなくなります。

また、AGA治療薬は、意外に効果を実感しにくい人が多いのも事実です。「抜け毛予防」程度の意識で取り組むべきで、過度な期待は持たないほうがいいでしょう。

AGA予防のために摂りたい食材

もちろん、投薬以外にも心がけたい生活習慣はあります。中でも重要なのが食事です。特に、AGAの発症要因であるDHTを抑制する働きを持つ食材は積極的に摂取したいですね。

具体的には、亜鉛を含む生牡蠣、レバー、牛肉、ビタミンB6を含む豚肉や魚の赤身、そして健康素材として知られる納豆や豆腐、豆乳などの大豆食品はオススメです。

アンチエイジングの視点で見ると、AGAは立派な「疾患」です。放置や諦めは、男としての自信を捨て去るようなもの。次回は、このAGAとEDの根本治療となり得る、幹細胞を用いた最新の治療法について紹介します。

(構成・中井広二)


【古賀祥嗣医師】 銀座ソラリアクリニック特別顧問。江戸川病院泌尿器科主任部長兼透析センター長・移植再生医療センター長。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本透析学会専門医・指導医。日本移植学会専門医。医学博士。著書に『20歳若返る デキる男のアンチエイジング』(イースト・プレス刊)他。

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