日本にコロナ重症者が少ない裏に免疫“誤認逮捕”の可能性

2020/11/30 免疫力向上

男の底力上げる20201116/イメージ

前回は、牛肉、とくに牧草牛を摂取することで免疫、特に「自然免疫」が強化される仕組みを説明した。今回はもう一つの免疫システムである「獲得免疫」と牧草牛の関係性について、日本機能性医学研究所所長の斎藤糧三医師が解説する。



獲得免疫は病気の「指名手配」

免疫は「疫を免れる」と書きますが、「一度かかった病気は覚えておいて再びかからないようにしよう」という病原菌登録システムです。私はよく、犯人の指名手配に例えます。獲得免疫は、指名手配写真を作って配布するまでに数日の時間を要するため、それまでは自然免疫がガンバル必要があります。

「風邪っぽいけれど、1日寝たら治ってしまった」というケースは、獲得免疫が機能する前なので、自然免疫で風邪を治してしまった可能性が高いです。


コロナとインフルエンザ予防に重要なタンパク質

これからは季節性のインフルエンザと世界的第3波で心配な新型コロナ対策が気になるところですが、いずれも上気道感染症(俗に言う風邪)です。これらはいずれも気道粘膜の細胞にウイルスが感染することで発症します。

そこで、前回もご紹介した粘膜面の守り役の「IgA」(免疫グロブリンA)というタンパク質が重要です。「自然・獲得免疫どちらも重要な役目を果たしている」と述べた理由を説明しましょう。


日本でなぜコロナ重症化が少ないのか?

日本人がなぜ新型コロナで重症化が少ないか、いまだ結論が出ていません。ただ、このIgAが標的にする指名手配犯の特徴は、「おでこの傷」「眉間のほくろ」「キツネ目」など多様性があります。これを新型コロナになぞらえると、昨年日本人がかかった「普通のコロナ風邪」で獲得した「犯人の特徴」が、新型コロナの特徴と共通なものがあったため、ありがたい「誤認逮捕」をしてくれている可能性がいわれています。

これを「交叉免疫」と呼び、獲得免疫担当のIgAが、新規感染の予防や重症化抑制に非特異的な自然免疫として一役買っています。


IgAを合成するビタミンAが必須

IgAは1日6グラム合成されると言われています。今の季節は特にIgAをつくるために必要な栄養素を十分摂取しなければなりません。

その合成にはビタミンAが必須。そして、牧草牛が食べる牧草にはβカロテンというビタミンAの原料が豊富です。つまり牧草を食べて育った牛の肉は、それだけでビタミンAの補給源として優れた食材といえるのです。また、牛も豚も鶏もレバーにはビタミンAが含まれています。

ただし、βカロテンやビタミンAを摂取する時には注意点があります。タンパク質欠乏だと、体内で運び役となるレチノールバインディングプロテインがすぐ減ってしまうのです。


タンパク質、鉄、亜鉛がセットの牛肉

成人男性の場合、1日60グラムのタンパク質を厚労省が推奨しています。これは毎日300グラムの肉に相当します。タンパク質は蓄えが効かないので毎日摂取する必要があります。

タンパク質がないと宝の持ち腐れになるのは、鉄も同様です。牛肉はタンパク質に鉄や亜鉛がセットで入っていますので、合理的といえます。

亜鉛は、タンパク質を利用する際に必須なミネラルで、日本人は不足していることが多い栄養素の筆頭です。成人男性の推奨量は1日10ミリグラムです。

これを牡蠣でクリアするためには、80グラムの牡蠣を毎日食べなければなりません。しかし牛肉、特に牧草牛の肉なら200グラム食べれば補給できます。

(構成・中井広二)

【齋藤糧三医師】

 1973年生まれ。98年、日本医科大学卒業。アメリカ機能性医学学会認定プログラム修了。2008年、日本機能性医学研究所を設立。サーモセルクリニック理事長、ナグモクリニック東京アンチエイジング機能性医学外来医長などを兼務。日本ファンクショナルダイエット協会ファウンダー。

  • はてなブックマークに追加

RECOMMEND

-AD-