徹底解説!正しい目で見る食品選び

2020/10/13 免疫力向上

男の底力2020年10月13日和食コース

これまで5回にわたって、同志社大学生命医科学部の市川寛教授に「食と免疫」の視点から、健康維持と男の底力の向上を解説してもらってきた。今回はその最終回。「正しい目で見る食品選び」について。

低糖質ダイエットの危険性

「低糖質ダイエット」という言葉もは、すっかり定着した感があります。元は糖尿病患者を対象として始まった食事制限ですが、短期間で体重減少の効果が出ることから、ブームになりました。

ただ、これは長期的に続けると腎機能に影響を及ぼすほか、大腸がんのリスクにもなることがわかっています。

そもそも脳にとって唯一の栄養であるブドウ糖の補給を断つことは、非常に危険なことと言えます。節度を持って取り組むべきでしょう。


タンパク質から食べるとよい

ただ、「食べる順番」に気を付けることは大事です。「最初は野菜から食べるのがいい」と思い込んでいる人は少なくありませんが、野菜に限る必要はありません。逆に最初に血糖を上げることの少ないタンパク質や脂質から食べると、食べ始めて10分ほどで消化管からインクレチンというホルモンが出てきます。これが膵臓に働きかけるとインスリンが出やすくなり、血糖が上がりにくくなるのです。

和食のコースだと最後にご飯が出てきますが、あれは非常に理にかなったこと。日頃の食事でも取り入れたい習慣です。


コレステロールとの付き合い方

もう一つ、日本人の多くが間違っているのがコレステロールとの付き合い方。体内のコレステロールのうち、食事として口から摂取するのは約2割に過ぎず、残りは肝臓で作られています。食べる量を減らしたところで、影響はないのです。

確かに悪玉コレステロールが酸化すると動脈硬化の原因になりますが、これとて抗酸化作用のある野菜や、抗酸化ビタミンのサプリを摂れば予防できます。総コレステロールの値が「300」を超えるような人でもない限り、気にする必要はないのです。


すべての栄養素をバランスよく

これまで、抗酸化作用を持つさまざまな機能性素材について紹介してきましたが、大切なのは一つの栄養成分に頼るのではなく、複合的にバランスよく摂取する―ということです。

「抗酸化ビタミン」の異名をとるビタミンEも、それだけを大量に摂取するのではなく、ビタミンCと一緒に取ることで生体全体の抗酸化機能を維持できることが分かっています。

赤ワインに含まれる機能性成分のレスベラトロールも、これを単体で高濃度摂取したところで効果は期待できません。やはり抗酸化機能を持つ他の栄養成分と一緒に取ることで意味を持つのです。

他にも、妊婦に必要な葉酸は、妊娠してからではなく普段から取っておくべきだし、同様に日本人はカルシウムやマグネシウムが不足しているので、これらも日頃から積極的に取る必要があります。


偏った情報に惑わされない

一方、ビタミンCとB群のように水に溶ける栄養成分は、一度に大量に取っても尿と一緒に出てしまいます。適量を継続的に飲んでいく必要があるのです。

日本人は「この成分が健康に役立つ」と聞くと、それだけを集中して摂取しようとして、お店では一時的な品薄を招いたりします。

偏った情報やブームに乗った消費者行動に惑わされず、正しい知識を持って、食生活を考えましょう。「食を通じた健康づくり」は、決して難しいことではないのです。

(構成・中井広二)


【市川寛】 京都府立医科大学卒業。米ルイジアナ州立大学留学などを経て、2008年から現職。日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本抗加齢医学会の各専門医。日本内科学会認定内科医。日本病態栄養学会認定病態栄養指導医。

  • はてなブックマークに追加

RECOMMEND

-AD-