日本でコロナ感染率が抑えられた謎解くカギは「食」か

2020/09/11 免疫力向上

男の底力2020年9月11日ヨーグルト

特定の食品に免疫を調整する機能があることを証明する研究が進んでいる。消化器内科医で同志社大学生命医科学部の市川寛教授は、免疫力を高める働きを持つ具体的な食品素材に言及。日本人の食生活が、免疫力の維持に役立っていることが見えてくる。

免疫力向上を示す4つの項目

国内の大手食品メーカーなどで組織する日本食品免疫学会では、食品が持つ機能のエビデンスづくりを目指した検証を進めています。


「T細胞増殖性」「NK細胞の活性化」「唾液中の免疫グロブリン(IgA)濃度の上昇」「好中球の貪食能」という、免疫力向上を示す4つの項目について、どの食品がどのように影響するのかを特定するのが目的です。


免疫には生体が元から持っている「自然免疫」と、ワクチンに代表される後天的に身に付ける「獲得免疫」の2種類がありますが、この4項目はいずれも自然免疫に含まれるものです。


なぜ、日本は感染率・重症化率が低いのか

新型コロナウイルスは、感染の割合や感染後の重症化に国や地域ごとの差が大きいことが指摘されており、日本は世界の中では「感染率も重症化率も低い」とされています。


その理由の1つとして、日本人は自然免疫が強いので、その作用によってウイルスの侵入をブロックしているのではないかという仮説があります。


新型コロナ感染症というと肺炎を想像しがちですが、実際には消化器症状を呈するケースも少なくありません。これまでの研究により、このウイルスが体内に侵入する場所は、肺胞と小腸の2カ所だということが分かっています。


なぜ、この2カ所が選ばれたのでしょうか。酸素と炭酸ガスを交換する肺胞と、食べたものから栄養を吸収する小腸は、どちらも機構上「バリアが薄い」という特徴があります。新型コロナウイルスは、その弱点を突いてきたのです。


もちろん、肺胞と小腸にも免疫機構は敷かれています。この2カ所で主たる警備活動をしているのはIgAという免疫グロブリンです。


言い換えれば、IgAの値が高ければ、新型コロナウイルスが体内に入ってきたとしても、免疫機構の働きで感染や重症化を防げる可能性は高まります。



日本人はIgAの値が高い

日本人はその食生活などから「IgAの値が高い」といわれます。これが新型コロナウイルスによるダメージを抑えている、と予測することはできるでしょう。


唾液中のIgAの値が高い人は、肺胞や消化管(小腸)でのIgAの価も高いことがわかっています。


そこで唾液中のIgAを増やす働きを持つ食品を積極的に摂ることは、新型コロナウイルス対策としても有効と考えることができるのです。


唾液中のIgAの値を高める働きを持つ食品として、まず挙げられるのは乳酸菌です。


なかでも「R-1」という乳酸菌は、それを摂取することで唾液中のIgA値が高まることが動物実験で証明されています。


もちろん、それ以外のヨーグルトや乳酸菌飲料、あるいは発酵食品にも同様の作用が期待できるほか、トマトジュースでも唾液中のIgAが高まることが、これまでの研究でわかっています。

男の底力2020年9月11日トマトジュース


なかでも発酵食品は、日本人の食事に数多く含まれる食材であり、これを伝統的に摂取してきた日本人は、それだけでも有利なのです。


コロナ禍にあって、乳酸菌と発酵食品の積極的な摂取は効果的な取り組みと言えるのです。

(構成・中井広二)

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