コロナで大注目!食品に期待される4つの免疫調整機能とは

2020/08/24 免疫力向上

男の底力・食と免疫力8月3日フルーツ

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、「免疫」への関心は高まるばかりだ。そこで今回から、食品を上手に選んで摂取することで得られる「免疫力の向上作用」について、消化器内科医で同志社大学生命医科学部の市川寛教授に解説してもらう。1回目は、「食品に期待される4つの免疫調整作用」について。

食品業界が取り組む2つの課題


市川寛・同志社大生命医科学部教授

同志社大生命医科学部・市川寛教授


いま、食品業界が総力を挙げて取り組んでいる問題が2つあります。「食品と免疫の関係解明」と「機能表示」です。


ある特定の食品を摂取することで、食べた人の免疫調整作用が高まることを明らかにし、その事実を食品のパッケージなどに表示することで、消費者の健康増進に役立てようとする取り組みです。


この実現に向けて、さまざまな食品が持つ免疫調整作用のエビデンス(科学的根拠)の実証作業が進められているのです。


国内の大手食品メーカーが参加する日本食品免疫学会では、食品の機能表示のための項目づくりを目指し、過去に世界中で発表された論文を検証しました。すると、食品を摂取することで、確実に免疫機能に影響を持つ項目があることが見えてきたのです。


免疫機能に影響をあたえる4項目

この中から、「日本国内のどの研究所でも容易に測定できること」を条件に、4つの項目に絞り込んで検討が進められました。


その4つとは、「T細胞増殖性」「NK活性(血中グラニュライシン濃度)」「唾液中の免疫グロブリン(IgA)」、そして「好中球の貪食能」です。


男の底力・食と免疫力8月3日免疫


T細胞とはリンパ球の一種。体内に侵入してきた異物と戦う「キラーT細胞」と、他の免疫細胞に呼び掛けて自身は司令塔として機能する「ヘルパーT細胞」に分けられます。いずれも免疫機能の中心的な役割を担う存在で、特定の食品によってこの機能が増強することが分かっています。


NK活性とは、「NK(ナチュラルキラー細胞)の活性化」を意味します。ナチュラルキラー細胞は全身を巡って、体外から侵入してきた、あるいは体内で発生した異物を排除する免疫細胞のこと。この細胞が元気づくことが「NK活性」であり、食品の摂取によってその機能が高まることが分かっています。


ちなみにこのNK活性と相関する物質に、「血中グラニュライシン」というタンパク質があります。体内に何らかの異常が起きて免疫機能が向上すると、血中のグラニュライシン濃度も高まるのです。


3番目の「免疫グロブリン」とは、血液や体液に含まれる免疫物質で、G、A、M、D、Eの5種類があります。


このうち、のどや肺胞、腸などに存在する免疫グロブリン(IgA)は唾液中にも分泌されます。言い換えれば、唾液中のIgA濃度が高まるということは免疫力も向上していることを示唆します。そして、その濃度を高める作用を持つ食品があることが分かっているのです。


最後の好中球とは、白血球を構成する5つの免疫細胞の一つです。「貪食」と言って、体内に入り込んできた異物(細菌)を好中球が食べることで健康を維持する働きを担っています。


これらの免疫機能と食品が、実は密接な関係を持っていることを科学的に証明する研究が続いており、がんや生活習慣病はもちろん、新型コロナウイルスなどの感染症予防にも効果を示す可能性が指摘されています。



【市川寛教授】

京都府立医科大学卒業。米ルイジアナ州立大学留学などを経て、2008年から現職。日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本抗加齢医学会の各専門医。日本内科学会認定内科医。日本病態栄養学会認定病態栄養指導医。




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