男性更年期障害による体の不調を漢方薬で解決
漢方カウンセラーとして年間2000人以上の女性の悩みに応じてきた薬剤師・大久保愛さん
更年期を改善したい時には、同時に起きるさまざまな不調に目を向けるだけではなく、
(1)原因
(2)生活習慣
(3)引き金となる出来事
の3つに注目し自分の体と向き合って対策を立てていくことが大切です。
漢方を上手につかって、ご自身の体と付き合っていきましょう。
- 原因、生活習慣、引き金となる出来事に目を向ける
- ホルモンの分泌低下で腎精不足が起き、老化に伴う症状を引き起こす
- 脾(ひ)の機能低下でだるさ、冷え、肌荒れ、肥満体質に
- 肝の機能低下で肝気鬱結が起き、火照り、イライラ、頭痛、不眠を起こす
- 症状に合わせて漢方は働きかけてくれる
原因、生活習慣、引き金となる出来事に目を向ける
人間は40歳を超え、50歳、60歳と年を重ねると若かった頃と比べ、体が言うことをきかなくなる機会が増えてきます。
実際、男女ともに40代を超えると個人差はあるものの、ホルモンの分泌量が減少し、様々な不調を感じやすくなるといわれています。
また、人によっては若い頃から続けてきた悪習慣によるダメージが、老化に拍車をかけて体に現れやすくなります。
自分にとって生活の一部になっていると、悪い習慣なのかどうか区別がつかなくなっていることも多いと思います。
たとえば、寝る時間が日付をまたいでいる。レトルトなどのインスタント食品を必ず休日に食べる。徒歩5分のコンビニエンスストアにも車で行く…。
そうした習慣があっても、若い頃なら体に何も起こらなかった方。加齢により代謝やホルモンの分泌量が落ちてくると、大きなダメージを与えてしまうこともあるのです。
責任ある世代になると、自分をとりまく環境の変化やライフイベントが心と健康に大きな影響を与えます。
子供の受験、就職や結婚、老いた親との同居や介護、大きな仕事を任されたり、定年を迎えて第二の人生が始まったり…。
これらのストレスが体の不調の引き金になることは、珍しくありません。
避けて通れない加齢による体の変化。解決法を漢方医学で考えてみましょう。
ホルモンの分泌低下で腎精不足が起き、老化に伴う症状を引き起こす
漢方では、老化に伴うホルモンの分泌の低下に関わる臓器を腎(じん)といい、腎の働きの低下を腎精不足(じんせいふそく)と呼びます。
この腎精不足によって、白髪や抜け毛、性機能の低下、頻尿、物忘れ、関節痛、耳鳴りなどの症状を引き起こすことがあります。
改善には腎の働きを高める漢方薬が有効です。
◇六味地黄丸(ろくみじおうがん)
最もスタンダードな腎の漢方薬です。加齢に伴う諸々の不調に対して初めに試すことが多いです。
抜け毛や白髪、腰痛や尿もれ、視力や聴力の低下、記憶力の低下などの老化現象を感じる人によく使われます。
◇杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)
六味地黄丸に、眼精疲労や目まいに効果的な生薬を加えたものです。女性のホルモンバランスが乱れているときにも使うことがあります。
◇知柏地黄丸(ちばくじおうがん)
六味地黄丸に、熱を冷ます生薬を加えたものです。微熱やほてりがひどいときにも使われます。
◇海馬補腎丸(かいまほじんがん)
動物性の生薬を含むため他の腎の漢方薬より滋養強壮作用が高いと言われています。冷えたり疲れたり精力がなくなったりとさまざまな機能がダウンしている時に使われます。
脾(ひ)の機能低下でだるさ、冷え、肌荒れ、肥満体質に
悪習慣の蓄積によるダメージを受けやすい臓器を脾(ひ)といいます。脾は、消化器系の働きをしています。
消化器系の働きは、食べ物から体に必要なものを作り出したり、毒素となるものを排泄することです。
このシステムに不具合が生じると、だるさ、冷え、肌荒れ、太りやすい体質などを引き起こしてしまいます。
脾の働きの低下を脾気虚(ひききょ)、それに伴う栄養不足を気血両虚(きけつりょうきょ)、さらに、毒素が溜まっていることを湿熱(しつねつ)と呼びます。
これらの改善には、脾の働きを高めたり元気な体に必要な気血を補う漢方薬が有効です。
◇補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
最もスタンダードな脾の漢方薬です。男性の更年期障害でよく使われる漢方薬でもあります。体力をつけながら胃腸の働きを整えてくれます。
◇加味帰脾湯(かみきひとう)
気血を補いながら、熱を冷まします。不安感やイライラなど気持ちを落ち着かせたい人によく使われます。動悸や不眠を感じる人にも良いとされています。
◇当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
貧血傾向や冷えがある人によく使われます。血を補い血の巡りをよくするといわれています。
◇黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
肌荒れの炎症、イライラや怒りなどの熱症状を感じる人によく使われる漢方薬です。その他にも胃炎で悩むときにも使うことができます。
◇温清飲(うんせいいん)
黄連解毒湯に四物湯(しもつとう)という血を補う漢方薬を加えたものです。
生理不順、肌荒れ、のぼせ、イライラなど、女性のさまざまな更年期障害の症状に効果的です。
肝の機能低下で肝気鬱結が起き、火照り、イライラ、頭痛、不眠を起こす
体調不良の引き金となるストレスの影響を受けやすい臓器を肝(かん)といいます。肝の働きの低下を肝気鬱結(かんきうっけつ)と呼びます。
肝はストレスによるダメージにより、次のような症状が出ることがあります。
火照り、イライラ、落ち込み、気の巡りが悪くなり背中がはる、肩こりが悪化する、頭痛や目まい、不眠などです。
これらの改善には、肝の気の巡りを改善する漢方薬が有効です。
◇加味逍遥散(かみしょうようさん)
最もスタンダードな肝の漢方薬です。上半身の熱を冷ましたり、イライラや怒りなどの感情を鎮めたいときに使われます。
◇柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
ひどいストレスを体が感じたときによく使われます。イライラや不安感がある人、不眠症にも効果的です。
◇抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
ちょっとしたことで神経が高ぶったり、落ち込んだり、緊張したりして体に力が入ってしまう人によく使われます。胃腸の働きを助ける生薬も含まれています。
◇桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体の巡りを整え、体にこもった熱を冷ましてくれます。肩こりがひどい人にもよく使われます。
症状に合わせて漢方は働きかけてくれる
男性更年期障害の典型的な症状である性機能の低下や原因不明の不調には漢方で対処するという方法もあります。
また、漢方だけでなく食生活も合わせて見直すことで、男性更年期障害を効果的に治療ができます。
「男性更年期障害に打ち克ち、男を取り戻すための治療法と食生活」では食生活など日常で取り入れれる、テストステロンの量を高める方法を紹介しているので合わせて確認下さい。
自分に合った方法を調べて実行し、男性更年期障害を改善し元気を取り戻しましょう。
この記事の監修者
大久保 愛
1985年生まれ、秋田の山で薬草を採りながら育つ。2008年昭和大学薬学部卒業。「アイカ製薬」代表取締役。薬剤師/薬膳料理家。漢方専門家として商品開発や企業コンサルティングに携わる。近著『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が、発売1カ月で7万部超のベストセラーに。
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