植毛しない薄毛治療!?幹細胞によるAGA治療とは

2021/11/26 自毛植毛
植毛しない薄毛治療!?幹細胞によるAGA治療とは

薄毛治療の手段として「幹細胞」のことを耳にした人もいるのではないでしょうか。

幹細胞は、発毛や育毛、美肌や軟骨再生などさまざまな分野で活用されている治療方法です。幹細胞から分泌される成分には多くのサイトカイン(生理活性タンパク質)が含まれており、ヘアサイクルの正常化や血管新生効果による血行改善・毛包幹細胞の活性化といった効果が期待できます。

この記事では、幹細胞や幹細胞上清液の役割から、幹細胞による薄毛治療の流れまでを解説します。合わせて、幹細胞治療を受けられるクリニックもご紹介します。まずは「幹細胞とは何か」から説明しましょう。

幹細胞とは?

幹細胞とは、組織を作ったり再生させたりする役割を持つ細胞です。自己複製機能や多分化機能を持つ、特殊な細胞のひとつです。

幹細胞には、それぞれの特徴や摘出場所により胚性幹細胞(ES細胞)、成体幹細胞、体性幹細胞、iPS細胞などの種類があります。

薄毛治療には、体性幹細胞の一つである「脂肪幹細胞」を主に使用します。脂肪幹細胞は、同じ体性幹細胞である骨髄幹細胞よりも数多くの幹細胞を比較的簡単に確保できます。

また、多くの場合、幹細胞そのものではなく、摘出した幹細胞を培養して得た「幹細胞培養上清液(ヒト幹細胞培養液)」を使用します。幹細胞から得られた培養液・上清液は、育毛や発毛のほか、美肌やシワ・たるみの改善、軟骨再生、歯周病治療といったさまざまな治療に活用されています。

幹細胞と薄毛治療

幹細胞と薄毛治療

薄毛治療には、幹細胞の持つさまざまな作用(複製機能・多分化機能・他幹細胞の活性化作用)を利用します。具体的には、頭皮対して以下のような働きが期待されています。

  • サイトカインによるヘアサイクルの正常化
  • 抜け毛の原因の一つである、頭皮内の炎症を静める
  • 血管新生の働きにより、頭皮の血行が良くなる
  • 頭皮内の脂肪分を増やし、頭皮を柔らかくする効果がある
  • 毛根の周囲に存在する「脂肪前駆細胞」が活性化し、毛包幹細胞を刺激する

幹細胞は多方面から発毛・育毛に働きかけてくれる細胞なのです。

「幹細胞培養液」「幹細胞培養上清液」とは?

ここで、「幹細胞培養液」と「幹細胞培養上清液(ヒト幹細胞培養上清液)」について確認しておきましょう。幹細胞培養液はすでに紹介した通り、幹細胞を培養した液体をいいます。

一方、幹細胞培養上清液(ヒト幹細胞培養上清液)は、幹細胞を取り出したあとの培養液の上澄みを指します。ただし頭皮に注入する薄毛治療では「培養液」も「培養上清液」も同様の使われ方をしており、明確な差はありません。

幹細胞の分泌する成分にはサイトカインが200~300種類ほど含まれており、幹細胞培養液や上清液には抗炎症、抗酸化作用、創傷治癒、免疫調整、組織再生や神経の修復といった作用が期待できます。幹細胞特有の幅広い作用により、薄毛・発毛だけでなく、さまざまな分野の治療で役立っています。

治療に幹細胞自体を使わないのはなぜ?

では、なぜ幹細胞自体を薄毛治療に使わないのでしょうか?自己複製機能と多分化能がある幹細胞自体を使えば、ヒト幹細胞培養上清液を作る手間なく、すぐに治療に取りかかれそうです。

実は、以前は幹細胞そのものを用いて治療していましたが、

  • 移植された幹細胞にマーカーを付けて経過を追ってみたところ、2週間以内にすべて消えていた
  • 幹細胞そのものを入れた場合、がんが発生するリスクがあると指摘されている

といった理由により、現在は培養液を使用するようになりました。

これまでの研究と検証により、幹細胞から分泌される成分には200~300のサイトカインや50以上の細胞外マトリクスが存在し、それらが多くの効果がもたらしていることが解明されています。

分泌された成分だけで発毛にもさまざまな効果が期待できるのであれば、培養液を使用した方が安全です。幹細胞そのものではなく培養液を頭皮治療に使用するのは、安全性と効果を考慮した結果なのです。

幹細胞と毛髪再生医療の実証は?

幹細胞と毛髪再生医療の実証は?

幹細胞やその培養液に効果が期待できることはわかったものの、それが頭皮にもきちんと効果があると確認されているのか気になりますよね。

2012年に東京理科大学が発表した『成体毛包由来幹細胞による毛髪再生を実証』において確認されています。この研究は「毛包から幹細胞と毛乳頭細胞を採取し人工的に毛包原基を作って戻したとき、その後もきちんと発毛することが確認できるか」を実証したものです。

この実証実験のポイントは以下の3つです。

  • 細胞から再生した再生毛包原基が皮膚内で毛包へと成長し、発毛できるか
  • 再生した毛包が幹細胞システムを再現して、永続的な毛周期を持つかどうか
  • 毛包が神経や立毛筋といった付属組織と接続して、天然毛と同じように立毛機能をもつかどうか

この実験により、
「再生毛包移植による毛髪再生技術は、ひとつの再生毛包原基から発毛する本数を制御することが可能であり、現在、臨床で行われているヒトでの毛包移植技術をそのまま応用できる利点があり、ヒト頭髪の密度(120 本/cm2)と同等以上の密度で毛髪を再生可能であることが示されました」と結論付けています。

よって、幹細胞による毛髪再生が可能であることが確認されたのです。
(参考文献:成体毛包由来幹細胞による毛髪再生を実証

幹細胞を用いた施術の大まかな流れ

幹細胞を用いた施術の大まかな流れ

ここまでの説明で「脂肪を採取するなら、大がかりな施術になるのでは」と不安に思う人もいるかもしれません。実際に幹細胞を使った薄毛治療は、どういった流れになるのでしょうか。施術前後のおおまかな流れをご紹介します。

施術前

施術前は、以下のようなスケジュールを設定しているクリニックが多いようです。

  • 1.問い合わせ
  • 2.来院・カウンセリング
  • 3.帰宅・検討
  • 4.再来院・脂肪採取
  • 5.ヒト幹細胞培養上清液を作成(数週間)

まずは、クリニックのカウンセリングを受けることから始まります。クリニックの医師や看護師と相談した人は、いったん帰って検討する場合が多いようです。

しかし、患者の同意があればカウンセリングと同じ日に脂肪採取と培養、採血を行うところもあります。施術までの段取りは各クリニックで異なるため、スピーディーに施術まで進みたい人はよく確認しておきましょう。

また、治療費の支払いは幹細胞の採取時に行われることも多いです。幹細胞による薄毛治療は自由診療で完全自己負担となるため、まとまった現金またはクレジットカードを持って来院するなど注意しておきましょう。

施術

施術では頭皮に麻酔を施し、ヒト幹細胞培養上清液を注射で注入します。幹細胞そのものを使用する場合は、ここで摘出と移植を行います。

中には、上清液の投与を点滴で行うクリニックもあります。「頭皮への刺激を避けたい」「痛みのない治療を選びたい」といった人は、注射以外の施術方法を行うクリニックも探してみましょう。

施術後の過ごし方・注意点

施術後は、主に入浴について制限がかかります。

  • 洗髪は24時間空ける
  • 長風呂は避ける
  • 染髪は2週間空ける

といった項目が多いですが、空けなければならない時間はクリニックによってさまざまです。加えて、脂肪採取時に切開をすることにより激しい運動も制限されます。

また幹細胞による薄毛治療の注意点として、効果が実感できる回数がクリニックによって異なることも挙げられます。

多くのクリニックでは月に1回の施術を3カ月以上行った際に実感できるとしていますが、なかには1回で効果が出るとするクリニックもあります。注意点・制限事項などをチェックし、慎重にクリニックを選びましょう。

幹細胞を用いた施術における副作用・リスク

幹細胞を用いた施術における副作用・リスク

ヒト幹細胞培養上清液を使う施術を受けた際の副作用・リスクもチェックしておきましょう。上清液を使用した治療を行う際は「脂肪採取部分」「培養液の注入部分(頭皮)」の2カ所に症状がでる可能性があります。

箇所症状
脂肪を摂取した部分2週間程度の内出血、筋肉痛程度の痛み、患部の硬さ、腫れ、赤み、熱感
注入した部分腫れ・痛みが起きるものの1週間程度で収まる。2週間程度の内出血が起きる可能性も

おおむね2週間程度で症状が収まる場合が多いですが、仕事で体を動かす必要のある人は注意が必要です。

幹細胞を用いた薄毛治療をしているクリニック

ヒト幹細胞培養上清液を使った薄毛治療を行っている全国のクリニックを紹介します。

全国区・本州のクリニック

聖心美容クリニック

聖心美容クリニック

  • 【全国区】札幌院、東京院、大宮院、横浜院、熱海院、名古屋院、大阪院、広島院、福岡院
  • 【幹細胞採取場所】大腿部・臀部など
  • 【回数】1回
  • 【値段】165万5,500円(KERASTEM1回165万円+血液検査代5,500円)

毛髪再生外来の「KERASTEM」として、幹細胞による薄毛治療を行っています。施術当日に脂肪採取を行い、幹細胞そのものを移植します。1回だけでも効果が出る点が特徴です。

ウィルAGAクリニック

ウィルAGAクリニック

  • 【関東・関西】新宿院、池袋院、表参道院、銀座院、立川院、町田院、横浜院、千葉院、名古屋院
  • 【幹細胞摂取場所】血液(PFC)、他者(LHDV)
  • 【回数】-
  • 【値段】PFC:9万6,000円~12万円+税/回、LHDV:11万8,500円~35万円+税/回

サイトカインやエクソソームを含んだ既存のオリジナルカクテル「LHDV」を注入するLHDV頭皮注入治療と、血液を遠心分離してできた、サイトカインを含む上澄みを使用する「PFC」の2種類の治療があります。

関東のクリニック

渋谷スキンクリニック

渋谷スキンクリニック

  • 【関東】東京・渋谷
  • 【幹細胞摂取場所】へそ
  • 【回数】6~12回
  • 【値段】自分由来…80万4,000円~126万円+税(12カ月分)、他人由来…36万円+税(8アンプル分)

自分由来のものでなく他人由来の培養液を選べば比較的安く治療できるため「興味があるけど高くて治療に踏み切れない」という人も検討できます。

また自分由来の幹細胞で治療する「自己由来成長因子(AGF)コース」の場合、発毛内服セットもつきます。「内服薬が無いのは不安」と感じている人も安心です。

HELENE

HELENE

  • 【関東】東京・港区
  • 【幹細胞摂取場所】毛髪(耳の裏)
  • 【回数】1回
  • 【値段】治療内容による

HELENEは、幹細胞培養を院内で行っているクリニックです。ほとんどのクリニックが培養を外注しているなか、院内でしっかり管理しています。「院内だけで処置が完結している、安心のクリニックを探したい」といった人におすすめです。

料金は治療内容によって変動するため、カウンセリング時などに確認しましょう。

銀座美容形成クリニック

銀座美容形成クリニック

  • 【関東】東京・銀座
  • 【幹細胞摂取場所】骨髄(造血幹細胞)
  • 【回数】-
  • 【値段】要問合せ

比較的少ない、骨髄から幹細胞を採取するクリニックです。回数・料金ともに要問合せとなります。

麹町皮ふ科・形成外科クリニック

麹町皮ふ科・形成外科クリニック

  • 【関東】東京・千代田区
  • 【幹細胞摂取場所】他者
  • 【回数】-
  • 【値段】注射11万円/回、点滴104万5,000円/回

注射・点滴と、幹細胞培養液の注入方法が選べるクリニックです。点滴タイプの治療を探している人は、麹町皮ふ科・形成外科クリニックがおすすめです。

銀座グレイスクリニック

銀座グレイスクリニック

  • 【関東】東京・銀座
  • 【幹細胞摂取場所】なし
  • 【回数】6回
  • 【値段】3万3,000円/回×6

カウンセリング・診察・注入と、スピーディーに治療の進むクリニックです。注射タイプで、さっと治療を終えて帰宅できます。月1回×6回が通院目安です。

アヴェニューセルクリニック

アヴェニューセルクリニック

  • 【関東】東京・港区
  • 【幹細胞摂取場所】へそ
  • 【回数】1回~
  • 【値段】要問合せ

1回でも効果を実感できるものの、希望する場合は複数回にわたって治療を受けられるクリニックです。幹細胞の保存期間・料金に関しては問合せとなります。

関西のクリニック

大阪再生医療センター

大阪再生医療センター

  • 【関西】大阪
  • 【幹細胞摂取場所】不明
  • 【回数】選択可能
  • 【値段】培養液の量による。例)5ccの場合:6回で162万円+初診料3,000円+再診料2,000円×5(各種税別)

利用する培養液の量を1~5ccまで、回数を3回と6回から選べるクリニックです。カウンセリング・相談を通し、無駄のない最適な治療プランを選べます。「固定の量ではなく、きちんと自分に合った量の培養液が使えるクリニックを探している」といった人におすすめです。

朱セルクリニック

朱セルクリニック

  • 【関西】福岡県
  • 【幹細胞摂取場所】血液
  • 【回数】3回1クール
  • 【値段】16万5,000円/回、39万6,000円/3回など

1回・3回・6回・10回と注入回数が選べるため、AGAの進行具合などに合わせた治療ができます。九州の人におすすめです。

幹細胞を用いた施術費用の相場

クリニックによって治療費にばらつきがあり、どこを選べばよいのか悩む人もいるでしょう。そこで、上記のクリニックの治療費から幹細胞の摂取場所ごとの平均を算出してみました。

  • 幹細胞培養上清液 脂肪幹細胞・注射の場合:71万6,000円
  • 幹細胞培養上清液 血液幹細胞・注射の場合:14万8,000円
  • 幹細胞培養上清液 他者・人工で注射の場合:16万8,000円
  • 幹細胞培養上清液 点滴の場合:104万5,000円/回

上記の数字はあくまでも目安の平均的な値段です。詳しくは各クリニックへ問い合わせましょう。

まとめ

幹細胞による薄毛治療とは脂肪や血液、骨髄などから幹細胞を摘出し、その培養液を使用して行う治療です。幹細胞培養液はさまざまな効果を期待できるもので、幅広い分野で活用されています。

実証実験でしっかりと検証が行われており、安心して治療を受けられます。

クリニックによって注入方法・治療の回数・使用する培養液の違いと、治療に関わる項目はさまざまに設定されています。あなたにぴったりのクリニックを見つけ、相談してみてください。

  • 参考文献
    ・ウィルAGAクリニック https://will-agaclinic.com/
    ・聖心美容クリニック https://www.biyougeka.com/
    ・光明クリニック https://www.guangming-clinic.com/
    ・幹細胞培養液を用いた臓器の再生 https://kenkyuukai.m3.com/
    ・小田クリニック https://www.ishinkai-mc.net/
    ・HELENE https://stemcells.jp/
    ・渋谷スキンクリニック http://www.shibuya-skin.com/
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