コロナ第三波と「性の変化」3〜性感染症は減ったのか?

2020/11/18 免疫力向上

11111_2SEX回数の変化_

新型コロナウイルスは唾液中に大量に含まれているので、咳やくしゃみでの飛沫で拡散する上、近距離での会話で唾液が相手の顔にかかってしまうと感染リスクが高まる。


このため、濃厚接触の最たるものであるセックスは、特に固定パートナー以外とのキス、オーラル/アナルセックスは、相手が感染者であった場合には危険度は高い。コロナ感染を恐れてセックスに積極的になれない人は、実際に多かったのではないだろうか。

セクシュアル・ウェルネス商品を開発・販売するTENGA社が今年7月に20-50代の男女、計960人を対象に行った「コロナと性」についての調査結果では、4人に1人が「性生活に変化があった」と答えている。

SEX回数は大多数が感染拡大とともに平時より減少傾向であったが、セックス回数が「月20~29回」の群は平時0.6%から緊急事態宣言後1.7%と倍増し、「月0回」群が増加する二極化も見えた。

性感染症を専門に診ているAクリニックの1日の平均患者数と、クラミジア、淋菌、梅毒の陽性率にも変化があった。新型コロナ感染予防のための外出自粛要請から、緊急事態宣言が出された4月、5月では検査件数は少ないが陽性率は高かった。何らかの自覚症状があり、来院した患者がほとんどであったからと推測される。6月に緊急事態宣言が解除になり、不安を抱えていた人たちが一気に来院し検査を受けるようになると、受診率はアップしている。

この患者動向を見る限りでは、4~5月のコロナインパクトは強かったものの、6月以降には既にコロナに慣れ始めている人々の動きがあるという印象も否定できない。

現在、ようやく通常モードに落ち着いてきているというAクリニックの検査数は淋菌・クラミジアで月平均300件前後、性感染症陽性率は2~3割と決して少なくはない。

では、病院に行くこと自体がためらわれていたコロナ禍であっても性感染症検査に外来を訪れた人にはどういう事情があったのだろうか。

Aクリニックのケースでは、来院患者は男性30代、女性20代が多く、女性の半数はセックスワーカーであった。Bクリニックでは男女とも20代、30代が多く、こちらは女性のセックスワーカーが3割程度。クリニックの立地によって患者層には、ばらつきがある。

感染ルートはパートナーとのセックスや風俗店利用だけでなく、SNSを通しての出会い系、パパ活などの、固定パートナー以外のケースが増えているという。コロナ禍で職などを失った女性が性感染症の知識もないまま風俗業をはじめて感染してしまったケースも少なくないようだ。

都市部の若年層の性感染症予防啓発に取り組むパーソナルヘルスクリニック(東京都文京区)院長の塩尻大輔医師=顔写真=はこう語る。


1111塩尻大輔医師

「コロナ禍では、性感染症に関する知識がほとんどないままに風俗に参入したり、SNSで風俗を始めたり、出会い系のセックスで感染した方が増えている印象はあります。風俗店では定期検査などを実施している所が多いですが、個人がネットで行うものは違います。若者はコロナにも性感染症にも危機意識が低い傾向があり、違和感を覚えて初めて来院されます。自覚症状がなくご自身が感染源になっている可能性がありますので、症状の有無にかかわらず検査を受けてほしい」

自分だけでなくパートナーを守るためでもある。

(医療ライター・熊本美加)


塩尻大輔(しおじり・だいすけ) 性病専門のパーソナルヘルスクリニック(東京都文京区)院長。2009年ケニア国ナイロビ大学医学部を卒業、ケニア国医師免許を取得。ケニア国キトゥイ県立病院で初期研修後、同病院産婦人科に勤務。13年、日本医師国家試験に合格。翌年、岩手県立磐井病院で初期研修修了、16年から国立国際医療研究センター総合感染症コースに所属。18年、熊本大学大学院博士課程・エイズ学に入学。現在、エイズ治療・研究開発センター(ACC)非常勤医師。19年7月、パーソナルヘルスクリニックを開設した。 



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