自毛植毛を検討している人の中には、より多くのドナーを確保するために、体毛を使いたいと考えている人もいるかもしれません。

体毛を使った自毛植毛はできるのか？できるとしたらどの程度の効果があるのか気になりますよね。

この記事では、体毛を使った自毛植毛について解説します。

• 体の毛を使った植毛をしたいと思う理由
• 腕毛やすね毛を使った自毛植毛はデメリットが多い
  • ボリュームアップ効果が狙えない
  • 体毛の休止期は長い
  • 頭髪と体毛は毛質が異なる
  • 生涯生え続ける可能性が低い
  • ドナー採取時に傷跡が残る
• 体毛植毛に対応しているクリニックはある
  • ヘア&スキンクリニック
  • ヨコ美クリニック
• 体毛が少ない部分に頭髪を移植する例もあり
• まとめ

体の毛を使った植毛をしたいと思う理由

自毛植毛は、脱毛症による薄毛治療のひとつです。男性に多い脱毛症にはAGAがあります。遺伝的な体質による男性ホルモンの影響で、生え際や頭頂部に薄毛が起こりやすくなるものです。

AGAによる薄毛の治療にはいくつか種類があります。その中のひとつが、男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部の毛包を採取して、薄毛部分に移植する自毛植毛です。

自毛植毛はいわば髪の毛の引っ越しのようなもので、髪の毛全体の本数は変わりません。もともと髪の毛が細い人では、１回の植毛でも後頭部がスカスカになってしまうこともあります。

このように、自毛植毛の原資であるドナーの採取数には限界があるため、施術を受けられる頻度にも限りがあります。そこで、薄毛部分のボリュームアップを狙うために、ヒゲやすね毛といった体毛を使った植毛を検討する人も少なくありません。

腕毛やすね毛を使った自毛植毛はデメリットが多い

近年は、女性だけでなく男性の間でも脱毛に人気が集まっており、体毛を使った植毛は一見すると効率がよくみえます。しかしながら、体毛脱毛はデメリットが多いため、日本ではほとんど行われていないのが現状です。

体毛を使った植毛が一般的でない理由は以下の通りです。

ボリュームアップ効果が狙えない

体毛は細く短い１本毛であるため、植毛してもボリュームを出すのが難しいという特徴があります。自毛植毛は毛包をドナーとして採取しますが、頭髪の毛包からは１本の毛が生えているのではなく、２本毛・３本毛・４本毛が生えています。

自毛植毛ではこれらの毛包を組み合わせながら移植することで、自然な見た目の髪の毛に仕上げることができます。

一方、体毛はひとつの毛包から１本毛しか生えていません。自毛植毛の施術で１本毛だけ植毛しても、薄毛をカバーできる分だけのボリュームを出すのは難しいのが実情です。

体毛の休止期は長い

髪の毛をはじめ体毛には「毛周期」というサイクルがあり、毛が生える「成長期」、毛の成長が止まる「退行期」、毛が抜ける「休止期」を繰り返しています。

体の表面に現れているのは成長期や退行期の毛で、全体の20～30％程度。そのほかの70％程度ある体毛は休止期で、毛根にとどまっており体表には現れていません。

頭髪は成長期の割合が多く、全体の85～90％が生えています。そのほかの体毛は成長期が短く、休止期の割合が多い特徴があります。自毛植毛の寿命にまつわる疑問について【自毛植毛、ここが気になる「髪の寿命は何年？」「抜けたら生え変わる？」】で詳しく紹介しています。ご覧ください。

例えば、アンダーヘアやワキ毛などの性毛の休止期は70％、手足の体毛は80％です。そのため、体毛を自毛植毛しても、頭髪として現れている期間が短い特徴があります。

頭髪と体毛は毛質が異なる

薄毛部分にドナーを移植して根付いた場合、以前の毛の性質を受け継ぎます。自分の庭にあるチューリップを他の土地に植えても、チューリップとして生えるのと同じです。

日本人の髪のタイプは直毛が多いため、アンダーヘア、胸毛、ワキ毛を移植しても、カールが強く、他の髪の毛とマッチしないことがあります。体毛植毛ではヒゲが用いられることもありますが、カールが強すぎたり、毛が太すぎたりすることもあるので注意が必要です。

生涯生え続ける可能性が低い

体毛もホルモンの影響を受けているため、加齢とともに頭髪以上に薄くなる傾向があります。公衆浴場で高齢者の足やワキがツルツルしていることに気づいた人もいるでしょう。

太い体毛を移植しても、年を重ねるとともに生えてこなくなる可能性が高くなるので、長期的に薄毛をカバーできないこともあります。

ドナー採取時に傷跡が残る

自毛植毛時に気になるのが、ドナー採取時に傷跡が残ることです。

自毛植毛のドナー採取では、帯状に皮膚を切除するFUT法と医療用パンチでくり抜くFUE法が選べますが、体毛の場合はFUE法により、ドナーをくり抜く方法のみになります。自毛植毛におけるFUTとFUEの違いについて詳しくは【傷跡にも違いがあるFUTとFUEとそれぞれの特徴とは】をご覧ください。

FUE法は傷跡が目立ちにくいといわれていますが、これは長めの髪型をしたときのみ。ドナーをくり抜いた箇所は米粒状の傷跡が残るため、体毛の部位によっては、外から目立ちやすくなります。

体毛植毛に対応しているクリニックはある

国内ではほとんど行われていない体毛植毛ですが、いくつかのクリニックで行っています。ここではヒゲを使った体毛植毛を行っているクリニックを紹介します。

ヘア&スキンクリニック

新宿と福岡に展開している植毛クリニック。後頭部からFUE法によるドナー採取のほかに、ヒゲを使った体毛植毛を行っています。ヒゲは顎下から採取するので、傷跡が目立たないように配慮がされています。

１人ひとりのヒゲの毛質を配慮しながら植毛箇所を選び、自然な仕上がりにこだわりがあるクリニックです。

ヨコ美クリニック

FUT法による自毛植毛を行っているクリニック。体毛植毛を積極的に行っているわけではなく、ドナーが枯渇したときに対応しています。通常の自毛植毛ではFUEを行っておらず、ドナー採取はヒゲのみになります。

以上のように、クリニックの中には体毛植毛を行っているところもありますが、必ずしもキレイに仕上がるわけではありません。体毛を使った植毛を受けるときは医師とよく相談することが大切です。

また、体毛からのドナー採取による傷跡は、思った以上に目立つこともあります。本格的な施術前に何株か採取してもらい、傷跡が目立たないか確認するのもおすすめです。

体毛が少ない部分に頭髪を移植する例もあり

体毛植毛とは反対に、頭髪を体の部位に植毛する例もあります。近年、若い男性には脱毛施術が人気ですが、男性の体毛は男らしさの象徴でもあります。

頭髪を体に植毛する例はあまり多くありませんが、ワキ毛や腕、第2関節の指に移植する例や、閉経後の女性のアンダーヘアのために植毛する例があります。

しかし、前述のように自毛移植はもともとあった毛の性質を受け継ぎます。頭髪をほかの部位に移植すると、毛質や長さが変わるので定期的なヘアカットが必要です。それでも、体毛の少なさで悩んでいる人は植毛を検討してみるのもよいでしょう。

まとめ

不要な体毛をドナーに使用できる体毛植毛ですが、デメリットが多く、おすすめの施術ではありません。自毛植毛を数回受けていて、薄毛部分をカバーしたいのにドナーが採取できない場合、検討してみることになります。

体毛植毛に対応しているクリニックは少なく、仕上がりがキレイになるとは限りません。体毛を使った植毛を受けるときは、医師とよく相談しましょう。