【医師監修】薄毛治療の副作用で体毛が濃くなる薬はどれ?理由について解説

2022/04/12 薄毛・AGA治療

薄毛治療の副作用で体毛が濃くなる薬はどれ?理由について解説

薄毛治療を考えている人の中には、治療により髪だけでなく体毛まで濃くなってしまうと心配している人もいるのではないでしょうか?もし体毛が増えてしまった場合、元に戻るのかも気になりますよね。この記事では「薄毛治療で体毛が増えるかどうか、さらには原因となる薬」について、「Gran Clinic」の小倉 慶雄 院長が解説します。

なかざわ腎泌尿器科クリニック「小倉 慶雄 院長」


薄毛治療の種類について

薄毛治療は加齢や男性ホルモンが原因のAGAによる薄毛を改善するためのものです。薄毛治療には大きく分けて薬物治療と植毛がありますが、体毛が濃くなるといわれているのは、一部の薬物治療によるものものです。

自毛植毛はドナーを体の部位に移植しない限り、毛が濃くなることはありません。AGA治療で行われる薬物治療には以下のものがあります。

     主な薬物治療
  • 内服薬:薄毛の進行を抑える薬や、血流を改善して発毛を促す薬を飲む
  • 外用薬:血流を改善して発毛を促す薬を直接頭皮に塗る
  • メソセラピー:髪の成長をサポートする成分を頭皮に直接注射する方法。効果の現れ方には個人差がある

そもそも薄毛になるのはなぜ?

結論から言うと、AGA治療薬の中には体毛が濃くなる可能性があるものもあります。どの薬により体毛が濃くなるかは、AGAのメカニズムと薬の作用について知ると分かりやすくなります。

ここではAGAで薄毛になるメカニズムについて簡単にみていきます。

AGAで薄毛になるメカニズム

AGAは男性ホルモン型脱毛で、遺伝的な体質によって薄毛の原因物質を作り出すことにより起こります。具体的には、男性ホルモンである「テストテロン」が「5αリダクターゼⅡ型」という酵素の働きにより「ジヒドロテストステロン(DHT)」が産生されることによって起こります。

ジヒドロテストステロンは頭髪の毛根にある毛母細胞の増殖を抑える作用があり、頭髪が細くなったり、ヘアサイクルが短くなったりします

薄毛の大敵ともいえるジヒドロテストステロンですが、男性らしい体つきを作る作用もあり、筋肉を増やしたり髭や胸毛を濃くしたりする働きもあります。

AGA治療の飲み薬で体毛が濃くなるか?

AGA治療の飲み薬で体毛が濃くなるか?

改めて、飲み薬の副作用により体毛が濃くなるかをみていきましょう。薄毛クリニックで使われるAGA治療の主な承認薬には以下のものがあります。

プロペシア®(フィナステリド)

もともとは前立腺肥大症に対して使われていた薬。患者の髪の毛が太くなる副作用が報告され、薄毛治療薬として用いられるようになりました。

ザガーロ®(デュタステリド)

プロペシアと同様に、前立腺肥大症に対して使われていた薬です。ジヒドロテストステロンの薄毛予防効果が注目され、AGA治療に用いられるようになりました。

フィナステリドやデュタステリドで体毛が薄くなるって本当?

プロペシア(フィナステリド)とザガーロ(デュタステリド)の2つの薬は、5αリダクターゼの働きを阻害してAGA原因物質であるジヒドロテストテロンの産生を抑える作用があります。そのため、発毛を促すわけではありません。ジヒドロテストステロンは体毛を濃くする作用があるので、いずれかの薬を使用することで、ジヒドロテストステロンが少なくなれば、体毛が薄くなることがあります。

デュタステリドとフィナステリドの違いとは?

デュタステリドとフィナステリドは、共に男性型脱毛症の治療に使用される薬剤ですが、その作用機序は異なります。

フィナステリドは、5αリダクターゼの「II型」のみを阻害し、ジヒドロテストステロンの生成を減らすことができます。一方、デュタステリドは、5αリダクターゼの「I型」と「II型」の両方を阻害するため、より強力な抜け毛予防効果を持つとされています。

両薬剤の一般的な副作用は、性的機能障害や乳房の腫れなどです。フィナステリドの場合、これらの副作用は比較的軽度であることが多く、デュタステリドはより副作用を引き起こす可能性があります。

これらの副作用は、通常、薬剤の使用を中止することで改善されます。したがって、どちらの薬剤を使用するかは、患者の状態や治療の目的によって異なります。選択する薬剤は、患者の医師が適切に判断し、患者に最も効果的で安全な治療を提供することが重要です。

塗り薬の副作用で体毛は濃くなるか?

AGA治療薬の塗り薬として使用されているのが、「ミノキシジル」です。ミノキシジルはもともと高血圧の治療に用いられていた薬です。薬を使用した人の中に、発毛や多毛症がみられたため、AGA治療薬として使用されるようになった経緯があります。

発毛効果のあるミノキシジルですが、塗り薬でヒゲや体毛が濃くなることはほとんどありません。飲み薬は血液を介して吸収されるので、薬の成分が全身に作用しますが、塗り薬はもともと局所に作用するようになっているためです。

同様の理由で、局所治療であるメソセラピーで体毛が濃くなることはほとんどないでしょう。

ただし、塗り薬のミノキシジルが誤って顔に垂れたり、塗った手で体の部位を触ったりを繰り返せば、眉毛やまつ毛が伸びたり、毛が濃くなる可能性はあるかもしれません。ミノキシジルが頭皮以外の部位に付いたときは、すみやかに洗い流すようにしましょう。

ミノタブの副作用で体毛が濃くなることはある

AGA治療の承認薬では体毛が濃くなることはありませんが、注意したいのがミノキシジルタブレットです。いわゆるミノタブと呼ばれる薬で、発毛効果のあるミノキシジルの飲み薬です。これは国内では承認されていません

ミノキシジルには血管を広げる作用があり、血流を改善することで、毛の成長に関わる「毛母細胞」を活発化する二次的な作用があります。ミノタブの場合、血液を介して全身に作用するので、体毛が濃くなる可能性があります。

実際に内服を始めると最初に初期脱毛がみられ、その後体毛が濃くなっていきます。体毛が濃くなったら頭髪が濃くなる前兆ともいえるでしょう。

毛が濃くなるかは薬の作用や機序によって異なる

「脇毛やヒゲは濃いけれど、頭が薄い」という男性もいるように、頭髪と体毛は男性ホルモンの作用機序が異なります。そのため薄毛治療で髪の毛が増えても、体毛も一緒に増えるということはありません。

また、薄毛治療で用いられている承認薬は、頭髪を増やすことにフォーカスされています。AGA治療薬の中には、他の病気の治療薬の副作用で多毛症がみられたものが、薄毛治療として用いられるようになった経緯があります。そういった中で、薄毛治療で体毛が濃くなるというイメージが広まっている可能性があるのかもしれません。

ミノタブのように体毛が濃くなる薬もありますが、服薬を止めれば体毛の増加も元通りになります。しかしながら服薬を止めれば薄毛が進行するリスクもあります。体毛が濃くなるのを避けたい人は、自毛植毛を検討してみるのもおすすめです。

今生えている自分の髪の毛を薄くなった部分に移す治療「自毛植毛」のメリットについては【自毛植毛を考えている人必見!自毛植毛のメリットとデメリットとは?】に詳しくまとめております。ご覧ください。

薄毛治療はクリニックで受けるのがベスト

薄毛治療は保険適用でないため、コストを下げるために治療薬を自己判断で使用しているケースも少なくありません。どの薬にも言えることですが、薬の使用には副作用のリスクがあります。

AGA治療薬は薄毛の症状や進行の程度だけでなく、本人の健康状態によって医師が服用量を調節しなければなりません。インターネットの情報等を参考にして自己判断で薬を飲んでいると、ちょっとした変化にも不安を感じるものです。

「体毛が濃くなった気がする」など小さな変化も相談できるように、薄毛治療はクリニックの診療を受けるようにしましょう。

AGA治療薬の効果は個人差があるので、クリニックなら早い段階で自毛植毛による治療に切り替えられます

まとめ

薄毛の治療薬で体毛が濃くなるかどうかは、薬の作用やその機序によっても異なります。一部のAGA治療薬では、体毛が濃くなる可能性もあります。

体毛が濃くなる等の副作用についても相談できるように、AGA治療薬はクリニックの処方を受けたものを使用しましょう。

  • 参考文献
    ・内科総合クリニック人形町 https://ningyocho-cl.com/hair/
    ・ヨコ美クリニック https://www.yokobikai.or.jp/
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この記事の監修者

小倉 慶雄

小倉 慶雄

大学病院で糖尿病・内分泌内科の臨床医として経験を積み「リサーチマインドを持った診療」をモットーに日々研鑽を積んでまいりました。酸化ストレス・サーチュイン遺伝子を中心とするアンチエイジングに関与する研究を行っていました。“すべての男性たちに、人生後半戦の演出家を。をコンセプトに” 2023年6月、JR金沢駅前にメンズヘルスクリニック(Gran Clinic)を開院。(https://www.gran-clinic.jp/)


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